📵 Excelは、ときどき嘘をつく

セルに表示されている数字は、本当に「中に入っている値」とは限りません。

この授業で何度か出てくる考え方——「中身(データ)と見た目(表示)は別物」
Excelはそれを一番身近に体験させてくれます。下のカードを実際に触って、 「見た目が変わっても中身は変わらない」を確かめてください。
罠① セル幅

0.9 が「1」に化ける

列を狭めると、Excelは無理やり丸めて表示します。でも中身は変わりません。

A
10.9
列の幅: 90px
画面の表示:0.9 / セルの本当の値:0.9
=A1*10 の結果:9
見た目が「1」でも、10倍すると 9。だから本当は 0.9 です。 (もし本当に1なら10になるはず)
💡 教訓:見た目の桁数で判断しない。グラフや集計に使われるのは「中身の値」。 列が狭いだけで「1」と読み取ると、データを読み違えます。
罠② #####

##### は「エラー」ではない

数字が列に収まらないと、Excelは ##### と出します。値が消えたわけではありません。

A
1#####
列の幅: 50px
セルの本当の値:1234567(広げれば見えます)
💡 教訓:##### を見て「壊れた」と思わない。列を広げる(またはダブルクリックで自動調整)だけ。
罠③ 小数の誤差

0.1 + 0.20.3 ではない

コンピュータは一部の小数を正確に持てません。Excelは見た目をごまかして 0.3 と表示します。

A
1=0.1+0.2
20.3
A2 の表示:0.3
本当の計算結果:0.30000000000000004
ぴったり 0.3 ではありません。IF(A2=0.3, "同じ", "違う")「違う」になることも。
💡 教訓:お金や厳密な比較では、ROUND() で丸めてから比べる。「=で一致するはず」が裏切られる。
罠④ 先頭ゼロ

0123123 になる

Excelは「数値」とみなすと、頭のゼロを捨てます。学籍番号・電話番号・郵便番号の事故の定番です。

A
10123
💡 教訓:ゼロで始まる「番号」は、Excelでは数値でなく文字列として扱う (セル書式を「文字列」に/先頭に ')。これは 26H + 7桁 の学籍番号にも関わります。
罠⑤ 勝手に日付

1-32/5 が日付に化ける

Excelは「日付っぽい」入力を勝手に日付へ変換します。止められません。

A
11月3日
入力した 1-3 が、日付に変わりました。
💡 教訓:遺伝子名 MARCH1 が日付化して論文データが壊れた有名事故があります (科学者が遺伝子名を改名したほど)。「1-3」「2/5」「SEP2」等は要注意。文字列指定で防ぐ。
罠⑥ 桁が多すぎ

長い数字が 1.23E+15 になり、しかも壊れる

16桁を超える数字(クレジットカード番号など)は、表示が指数になるだけでなく、末尾が 0 に化けます

A
11234567890123456
表示:1.23457E+15 / 実際に保存される値:1234567890123450 (末尾の 6 が 0 に!)
Excelの数値は約15桁までしか正確に持てません。
💡 教訓:長い「番号」は計算しないので、最初から文字列で扱う。数値にした瞬間、末尾が静かに壊れます。

まとめ:見た目を信じず、中身を確かめる

6つの罠に共通するのは、「画面の表示」と「セルに入っている本当の値」がズレること。
これは Excel が下手なのではなく、データと見た目を1つに固めている道具の宿命です。
データを扱うとき、そして AI にデータを渡すときも—— 「見えている数字=本当の値」とは限らないと疑える人が、間違えません。