マルコフ性(Markov Property):現在の状態は直前の状態だけに依存する、という仮定
天気のマルコフ連鎖(具体例)
状態集合
(行:現在の状態、列:次の状態)
音声では「状態 = 音素の一部(音素サブユニット)」と対応づける。音声は時間軸上で状態が遷移する過程として捉えられる。
| 記号 | 名前 | 意味 |
|---|---|---|
| πi | 初期確率 | 時刻1で状態iから始まる確率 |
| aij | 遷移確率 | 状態iから、次の時刻の状態jへ進む確率 |
| bi(o) | 出力分布 | 状態iでの観測の確率、または確率密度 |
ASRの最終目標は文字・単語列。その探索の中でHMMの状態系列も扱う。
MFCCのような連続値には確率密度を使う。密度値は1を超える場合もある。
説明用に、音素/a/へ3状態の左から右へ進むHMMを割り当てる。
| 遷移 | 確率 | 意味 |
|---|---|---|
| S1 → S1、S2 → S2、S3 → S3 | a11、a22、a33 | 自己ループ |
| S1 → S2、S2 → S3 | a12、a23 | 次の状態へ |
| S3 → 終端 | a3,end | 音素HMMを出る |
各状態から特徴量を出力する。出る遷移の確率は終端も含めて合計1。自己ループ確率が高いと継続時間の期待値が長くなる。
目標:観測列Oに対して、最も確率が高い状態系列を求める。
δt(j):時刻tで状態jにいる、最良パスの値。
| 処理 | 内容 |
|---|---|
| 初期化 | δ1(i)=πibi(o1) |
| 更新・記録 | 各状態へ入る最大値と、直前状態の番号を残す |
| 経路の復元 | 最後の最大値から、記録した番号を逆にたどる |
N状態・T時刻の全探索NTを、密な遷移ならO(N²T)へ削減。連続観測では出力密度を用いる。
多次元ガウス分布:例として13次元MFCCに差分2種類を加えた39次元特徴量を扱える。
この密度式では共分散行列Σを正定値とする。
GMM:複数のガウス分布を重み付き和で組み合わせる。
GMM-HMM:連続観測の出力密度をGMMでモデル化。
EMのEステップで状態・成分の事後確率を計算し、Mステップでパラメータを更新する。大域最適解や汎化性能の改善は保証しない。
DNN-HMM:DNNが推定する状態事後確率を、状態の事前確率で割って利用。
DNNの出力そのものは、GMMの出力密度と同じ量ではない。
評価の注意:TIMITの音素認識でのPERと、単語認識でのWERを区別する。学習・評価条件をそろえて比較する。
文字起こしの作成には人手が必要。利用できる量や作業時間は、言語・分野・音質などに依存する。
自己教師あり学習:文字起こしのない音声から、入力自体を用いて学習目標を作る。
| 段階 | データと目的 |
|---|---|
| 事前学習 | 大量の文字起こしなし音声から表現を学ぶ |
| ASRへの追加学習 | 文字起こし付き音声で対象タスクを学ぶ |
| 評価 | 学習に用いなかったデータで性能を測る |
単純な次の音の予測や、元波形の復元そのものではない。
波形 → CNN特徴量z。原論文では16 kHz入力から約20 ms間隔、25 msの受容野で特徴量を出す。
| 経路 | 処理と出力 |
|---|---|
| 量子化側 | マスク前のzから、コードブックを使って量子化ベクトルqを作る |
| 文脈側 | 一部のzをマスクし、Transformerで文脈表現cを作る |
| 比較 | マスク位置のcに対応するqを、負例から識別する |
Qt:正例と、同じ発話の別のマスク位置から選ぶ負例。simはコサイン類似度、κは温度。
コードは正解の音素ラベルではない。コードブックの多様性損失も加える。Baevski et al. (2020)
核心:クラスタIDを擬似ラベルとして作り、マスク位置で予測する。
| 段階 | 処理 |
|---|---|
| 最初の目標作成 | MFCCにk-means → クラスタID |
| 表現学習 | マスク位置のIDを分類するようモデルを学習 |
| 目標の更新 | 学習した特徴量に再びk-means → 更新したID |
| 項目 | wav2vec 2.0 | HuBERT |
|---|---|---|
| 離散化 | 学習可能な量子化器 | オフラインk-means |
| 主な目標 | 量子化ベクトルを識別 | クラスタIDを分類 |
| 損失 | コントラスト+多様性など | マスク位置のクロスエントロピー |
クラスタIDは正解の音素ラベルではない。反復するだけで必ず改善するわけではない。Hsu et al. (2021)
wav2vec 2.0:BASE・LS-960で事前学習・4-gram LMで復号。LibriSpeechテストセットのWER(%)。
| 追加学習のラベル付き音声 | test-clean | test-other |
|---|---|---|
| 10分 | 9.1 | 15.6 |
| 1時間 | 5.5 | 11.3 |
| 10時間 | 4.3 | 9.5 |
| 100時間 | 3.4 | 8.0 |
Baevski et al. (2020), Table 1の同一条件の行を比較。
締め切り:翌週末 23:59
| 概念 | ポイント |
|---|---|
| 従来型ASR | 音響モデル・発音辞書・言語モデルをデコーダで統合 |
| HMM | 初期確率・遷移確率・出力分布の3要素 |
| Viterbi | 最良状態系列を動的計画法で求める |
| GMM | 複数ガウス分布の重み付き和で確率密度を表す |
| DNN-HMM | DNNの状態事後確率をHMMの系列構造と組み合わせる |
| wav2vec 2.0 | 量子化表現をコントラスト学習の目標にする |
| HuBERT | オフラインのクラスタIDをマスク予測する |
次回(第8回):ConformerとWhisperを例に、ニューラル音声認識の構成と使い方を学ぶ。
第7回の理解度テストを受けてください
お疲れさまでした!
各問の正解と詳細解説は第7回の本文を参照。Google Formsに問題・選択肢・解説を転記する。