社会調査入門|北星学園大学 2026年度後期

第06回 市場調査・マーケティングリサーチ

北星学園大学 2026年度後期
社会調査入門

小野原 彩香
社会調査入門|北星学園大学 2026年度後期

本日の学習目標

  1. 市場調査とマーケティングリサーチの違いを説明できる
  2. 一次データ収集の主要な手法(アンケート・FGI・覆面調査・観察調査)を理解する
  3. 二次データ(POSデータ・購買履歴・SNS分析)の活用方法を知る
  4. ビッグデータ時代のマーケティングリサーチの変化を把握する
  5. 学術的社会調査との共通点・相違点を整理する
小野原 彩香
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「市場調査」と「マーケティングリサーチ」は同じ?

市場調査(マーケットリサーチ)

  • 「市場の現状把握」に焦点を当てた調査
  • 例:「この地域の年齢別人口は?」「競合他社のシェアは?」
  • 主に記述的(現状を正確に描写する)

マーケティングリサーチ

  • 市場調査を含む、より広い概念
  • 製品開発・価格設定・販売促進・流通など、マーケティング意思決定全般を支援
  • 例:「なぜ消費者はこの商品を選ばないのか?」

近年は両者を区別せず「マーケティングリサーチ」と呼ぶことが多い

小野原 彩香
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マーケティングリサーチの目的と活用場面

活用場面 具体例
新製品開発 消費者ニーズの探索、コンセプトテスト
価格設定 価格感度測定(PSM分析)
広告効果測定 CM放映前後の認知率・好感度の変化
顧客満足度 NPS(ネット・プロモーター・スコア)
販路開拓 地域別購買傾向の分析
ブランド戦略 ブランド認知・イメージ調査

マーケティングリサーチは「意思決定のためのリスク軽減ツール」

小野原 彩香
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一次データ収集の方法(1):アンケート調査

消費者に直接質問する最も基本的な手法

方式 特徴 メリット デメリット
郵送調査 質問票を郵送・返送 広域・低コスト 回収率が低い
Web調査 オンラインで回答 迅速・低コスト インターネット利用者に偏る
対面調査 調査員が直接聴取 高回収率・深堀り可 コスト・時間がかかる
電話調査 電話で質問 迅速・全国対応 固定電話保有者に偏る

マーケティング調査での工夫:クオータ(割り付け)サンプリング(年齢・性別・地域で均等割り付け)

小野原 彩香
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一次データ収集の方法(2):グループインタビュー(FGI)

FGI(フォーカスグループインタビュー)とは

  • 6〜8人の消費者を集め、モデレーター(司会者)が進行
  • 自由な意見交換から深層心理・潜在ニーズを探る
  • 定量調査では捉えにくい「なぜそう思うのか」を掘り下げる

活用場面

  • 新商品コンセプトの評価
  • パッケージデザインの反応測定
  • 広告・CMの試写評価

注意点

  • 少人数のため統計的代表性はない
  • 「声の大きい人」に引きずられるリスク(モデレーターの技術が重要)
小野原 彩香
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一次データ収集の方法(3):覆面調査(ミステリーショッパー)

ミステリーショッパーとは

  • 調査員が「普通の客」を装って店舗・サービスを利用
  • 接客品質・店舗環境・対応の実態を客観的に評価

評価項目の例

  • 挨拶・笑顔・言葉遣い
  • 商品知識・説明能力
  • 待ち時間・清潔感
  • クレーム対応の適切さ

活用業種:小売業・飲食業・金融機関・コールセンター

倫理的課題:被調査者が調査されていることを知らない → 告知なし観察の問題

小野原 彩香
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一次データ収集の方法(4):観察調査

消費者の行動を「見る」ことで実態を把握する

行動観察調査

  • 店内での動線・滞在時間・商品の手に取り方を観察
  • カメラ・センサー・アイトラッキングで記録

購買行動分析

  • どの棚の前で立ち止まるか、どの順で商品を見るか
  • 「言葉にできない行動」を捉えられる

インタビューとの違い

  • 人は「自分の行動を正確に語れない」ことが多い
  • 観察は「実際の行動」、インタビューは「意識・態度」を測る

例:棚の高さ別売れ行き → ゴールデンゾーン(目線の高さ)の重要性

小野原 彩香
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二次データの活用

自社または外部が収集済みのデータを再利用する

POSデータ(販売時点情報管理)

  • レジで記録される商品・時刻・個数・価格
  • いつ・何が・いくつ売れたかをリアルタイム把握

購買履歴データ

  • ポイントカード・ECサイトの購買記録
  • 個人レベルの繰り返し購買パターン分析

SNS分析(テキストマイニング)

  • Twitter/X・Instagram・口コミサイトの投稿を収集・分析
  • 自然発生的な消費者の声(VOC:Voice of Customer)
小野原 彩香
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ビッグデータとマーケティングリサーチ

ビッグデータの特徴(3V)

  • Volume(量):膨大なデータ量
  • Velocity(速度):リアルタイム生成・処理
  • Variety(多様性):構造化・非構造化データ

AIによる需要予測

  • 機械学習を用いた売上予測・在庫最適化
  • Amazonの「先行配送」特許(購買前に倉庫移動)

事例:コンビニのデータ活用

  • 天気・イベント・曜日×商品別発注最適化
  • POS×顧客属性でターゲット別棚割り

調査せずとも「行動ログ」から消費者インサイトを得る時代へ

小野原 彩香
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マーケティングリサーチの具体事例

コンビニ新商品開発

  1. 社内でトレンド仮説を立案
  2. FGIで消費者反応を探索(複数グループ)
  3. 試作品を作り、HUT(自宅使用テスト)で評価
  4. 量的調査でコンセプト採用率・価格感度を測定
  5. テスト販売(一部地域限定)→ POSデータで検証
  6. 全国展開

映画の試写会調査

  • 本公開前に数百人に試写
  • 「つまらない箇所」はどこか → 編集に反映
  • エンディング違いで複数評価、ターゲット層別の差異確認
小野原 彩香
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学術的社会調査との比較

比較項目 マーケティングリサーチ 学術的社会調査
主な目的 意思決定支援・利益追求 知識の生産・理論検証
依頼者 企業・団体 研究者・学術機関
タイムライン 短期(数週間〜数か月) 長期(数年に及ぶことも)
公開性 非公開が原則(企業秘密) 公開・査読が原則
サンプリング クオータ・便宜サンプル多 確率サンプリング重視
倫理審査 任意・業界自主規制 機関倫理審査委員会

共通点:問いの明確化、データの体系的収集と分析、解釈と報告

小野原 彩香
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ディスカッション:調査設計を考える

グループワーク(15分)

次の状況で、あなたが担当者なら何を、どう調べますか?

シナリオ:あなたは飲料メーカーの新商品担当者。
「大学生向けのノンアルコール飲料」の新商品を開発したい。
どのような調査を、どの順番で実施しますか?

考えるポイント

  • 何を明らかにしたいのか(リサーチクエスチョン)
  • 最初は定性・定量どちらから始めるか
  • だれに・どんな方法で聞くか
  • どのデータを使えば仮説が検証できるか
小野原 彩香
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学術的社会調査との接続

マーケティングリサーチから学べること

  1. 操作化の具体性:消費者の「好み」を測定可能な指標に変換する技術
  2. サンプリングの実際:割り付けサンプルの長所と限界
  3. 混合手法の実践:定性(FGI)→ 定量(アンケート)という研究デザイン
  4. データの活用: POSや購買履歴などの行政・企業統計の読み方

次回以降への接続

  • 第07回:先行研究・論文検索 → 社会調査の学術的蓄積を調べる
  • 第10回以降:質問票設計の実際
小野原 彩香
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本日のまとめ

  • 市場調査はマーケティングリサーチの一部。企業の意思決定を支援する
  • 一次データ収集の主要手法:アンケート・FGI・ミステリーショッパー・観察調査
  • 二次データ(POS・購買履歴・SNS)はリアルタイム性・低コストが強み
  • ビッグデータ・AIにより「調査せずとも行動ログで分析」する時代になっている
  • 学術調査との大きな違い:目的(利益 vs. 知識)、公開性、倫理審査の有無
小野原 彩香
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本日の課題

提出期限:次回授業開始前(Moodle提出)

以下の課題に取り組み、300〜500字でまとめてレポートを提出してください。

課題内容

身近な企業(コンビニ・飲食チェーン・アパレル・家電メーカーなど)が実施したマーケティングリサーチ事例を1つ調べ、以下の点を分析してください。

  1. 調査の目的:その企業は何を明らかにしようとしたのか
  2. 調査手法:どのような方法でデータを集めたのか(アンケート・観察・POSデータ等)
  3. 調査結果の活用:得られた情報をどのように製品・サービス・戦略に反映したのか
  4. あなたの評価:その調査手法は目的に対して適切だったと思うか。理由も述べること

企業のプレスリリース・ニュース記事・公式サイト等を参考にしてください。情報源(URL・記事名・閲覧日)を必ず記載してください。

小野原 彩香