社会調査入門 北星学園大学 2026年度後期 小野原 彩香
語源: ギリシャ語 ethnos(民族・人々)+ graphia(書き記すこと)
「ある集団・文化の社会生活・慣習・価値観を、長期的なフィールドワークを通じて詳細に記述すること」
一言で言うと: 「その人たちの世界に深く入り込み、内側から理解し、書く」
エスノグラフィが答えようとする問い:
エスノグラフィはもともと 文化人類学 の調査方法として発展した
19世紀末〜20世紀初頭: 人類学者が「未知の」社会・文化を記述する方法 ↓ 20世紀中葉以降: 社会学・教育学・看護学・組織論など 多くの分野に広がる ↓ 現代: あらゆる集団・組織・コミュニティの研究に応用
重要: 「未知の文化」を調べる方法から、身近な社会の「見えない当たり前」 を発見する方法へと変化した。
『西太平洋の航海者』(Argonauts of the Western Pacific, 1922)
方法論的革新:
『菊と刀』(The Chrysanthemum and the Sword, 1946)
注意点:
「解釈的人類学」(interpretive anthropology)の確立
「エスノグラフィーとは、異文化理解の練習ではなく、人間の経験の意味を解釈することである」
「薄い記述」vs「厚い記述」
3つの組み合わせが基本:
参与観察 + インタビュー + 資料・文書収集 ↓ フィールドノート→分析→記述(エスノグラフィ)
長期性・集中性:
エスノグラフィの目標:
対象: 企業・病院・学校・官庁などの組織
事例:
特徴:
定義: オンラインコミュニティ・SNS・フォーラム等を対象とした参与観察的研究
Kozinets, R.V. (2010) が体系化した方法論
倫理的課題: 公開情報でも「観察されている」意識の欠如、スクリーンショットの扱い等
定義: 研究者自身の経験を「データ」として、文化・社会との関係を記述・分析する方法
代表的な問い:
批判と評価:
長期的関与がもたらす特有の問題
関係性の問題:
代表性と権力の問題:
「返還(giving back)」:
佐藤郁哉(1984) 『暴走族のエスノグラフィー』新曜社 → 暴走族コミュニティへの参与観察。日本の社会学的エスノグラフィの代表作
中根千枝(1967) 『タテ社会の人間関係』講談社現代新書 → 日本の組織文化を「タテ社会」として記述。エスノグラフィ的感性に基づく古典
岸政彦(2015) 『断片的なものの社会学』朝日出版社 → インタビュー・観察から積み上げた「ライフストーリー」的エスノグラフィ
どんな問いか? │ ├─ 仮説検証型(量的)→ 質問紙・統計 │ 「どのくらい?」「どんな傾向?」 │ └─ 意味探索型(質的)→ インタビュー・観察・エスノグラフィ 「なぜ?」「どのような意味で?」「当事者にとって?」
倫理は全方法に横断する原則
この授業で最も伝えたかったこと:
「社会を調べることは、人間への敬意から始まり、人間への敬意で終わる」
「自分が実施してみたい社会調査の企画書」
この授業全体で学んだことをもとに、あなた自身が設計する社会調査の企画書 を作成してください。
記載すべき内容(400〜600字):
提出期限: 2026年○月○日(シラバス参照) 提出方法: manaba のレポート提出から
社会調査を学ぶことは、世界の見方を変えること です。
調査方法は「道具」にすぎません。 大切なのは、その道具を 誠実に・倫理的に・創造的に 使うことです。
皆さんが社会を調べる旅の第一歩を踏み出してくれることを願っています。
1学期間、ありがとうございました。