統計学Ⅰ(B)2026 第3回

第3回 ばらつきを測る

正規分布という「仮定」

統計学Ⅰ(B) 北星学園大学
小野原 彩香

統計学Ⅰ(B)2026 第3回

今日のゴール

  1. 分散・標準偏差が何を測っているか
  2. 偏差値の正体
  3. 正規分布の 68-95-99.7 則 と、「正規だと仮定してよいか」の確かめ方

到達目標 G1(記述統計)

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前回の答案から

冒頭で確認する4つ

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第2回の結果

52名提出 / 記述は38名が満点

減点した14名のつまずきは 4つの型 に分かれた


どれも今日の「ばらつき」に直接ひびく

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① 最多 ―― 「とりあえず消すのが危険な理由」が未記述(3名)

B2が求めたのは3点
除いてよい例 / 除いてはいけない例 / なぜ危険か


異常値(記録の誤り)と本物の極端な値を
区別せずに消すと、本物の情報まで失われる
だから消す前に なぜ外れているのかを確かめる

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② 除いてよい/いけないの取り違え(4名)

書かれていたこと どこが違うか
10万円の出品は「相場に不相応だから除く」 極端だから消す=禁じ手。実在すれば本物
ゴリラ149kgは「中央値から遠いから除く」 中央値から遠いことは理由にならない
入力ミスを「除いてはいけない」側に(2名) 入力ミスは除いてよい側
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除いてよいのは、この3つだけ

  1. 欠測コード(−999 のような符号)
  2. 入力・測定の誤り(訂正、できなければ理由を明示)
  3. 対象範囲の限定(目的と手続きを明示)

「平均から遠い」「極端だ」は理由にならない

理由になるのは その値が測りたいものを測れていない という根拠

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③ ヒト科除外を「外れ値除去の例」として引いた(2名)

「ヒト科7種を除くと平均は1,754g動くが中央値は209g」

これは 外れ値除去ではない

外れ値除去 ある値を「おかしい」と判断して取り除く
対象範囲の限定 「ヒト科以外の霊長類」を分析対象と決める

結論は同じでも やった操作が違う

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④ 与えられた数値の書き写し間違い(1名)

アルバイトの時給は 1,050円(1,500円ではない)


結論は変わらないが、代表値の話は
「どの数字を代表させるか」

→ 元の数字は正確に写す

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今日につながること

外れ値は、代表値よりも ばらつきに強く効く


二乗するので、遠い値の影響がさらに大きくなる


①②でつまずいた人は、今日も同じところで迷う

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クイズ:2つの森、どちらも平均6.0kg

同じような群れ?

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平均だけでは分からない

  • 森A:ほとんどが6kg前後(SD ≈ 0)
  • 森B:半分2kg・半分10kg(SD ≈ 4.1)

平均は分布の 「位置」 しか表さない。
足りないのは 「散らばり」=ばらつき。

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分散が大きい/小さいとは

平均はどちらも158cm。違うのは矢印の長さだけ

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ばらつきの測り方

  1. 各データの 平均からの差(偏差)
  2. プラスマイナスが打ち消す → 二乗して平均 = 分散
  3. 単位が日²で読めない → ルートで戻す = 標準偏差(SD)
妊娠期間日 値
平均 164.4 日
分散 1,427.2(日²)
標準偏差 37.8 日 ← これを使う
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分散のイメージ ―― なぜ二乗するのか

矢印の長さ(偏差)を 二乗して足し、データ数−1で割る = 分散

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偏差値の正体

偏差値=50+10×値−平均標準偏差偏差値 = 50 + 10 \times \frac{値 - 平均}{標準偏差}

平均50・SD10 に置き直した 相対位置

種 生スケール 対数スケール
ネズミキツネザル 31g 45.5 23.2
ニホンザル 10kg 53.2 59.9
ヒガシゴリラ 149kg 159.2 77.1

同じ80点でも、集団のSDが違えば偏差値は変わる

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正規分布と 68-95-99.7 則

範囲 理論 対数体重 生の体重
±1SD 68% 71.7% 97.4%
±2SD 95% 94.7% 97.4%
±3SD 99.7% 100.0% 98.5%
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生の体重の 97.4% が2つ並ぶのは誤植ではない

範囲を広げたのに1種も増えていない

なぜ
下側 平均 −1SD が −7,254 g。下に広げても入る種はいない
上側 +1SD(19,016 g)〜 +2SD(32,150 g)に該当種が1種もない

その外側(+2SD〜+3SD)には3種いる
→ ピグミーチンパンジー 35,120 g・スマトラオランウータン 39,696 g・チンパンジー 45,000 g
→ だから ±3SD で 98.5% に増える

ヒストグラムに穴があいている

釣鐘型なら、平均から外へ途切れずに減っていくはず
→ この穴そのものが「正規ではない」証拠

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でも、すべてが正規ではない

生の体重の歪度 +7.60(対数なら −0.40)。正規曲線がまるで合わない。

しかも 平均−1SD = −7,254g。体重がマイナスの動物はいない。

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「正規だと仮定する」は判断

自然法則ではない

  • 68-95-99.7則も、後で習う多くの手法も「正規」前提
  • どの量について、何のために正規性を仮定するのかを確認する
    (例:回帰で問題になるのは多くの場合、変数そのものではなくモデルの誤差)
  • 鉄則:まずヒストグラムで形を見る
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まとめ

平均は「位置」、SDは「幅」

両方見て初めてデータが分かる

正規分布は便利な仮定 ―― 当てはまるかは自分で確かめる

次回:Python統計処理入門(自分でコードを書く)