統計学Ⅰ(B)2026 第6回

第6回 確率分布と標本

中心極限定理 ―― なぜ一部で全体が分かる

統計学Ⅰ(B) 北星学園大学
小野原 彩香

統計学Ⅰ(B)2026 第6回

前回の補足

交絡と「媒介」は違う

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第5回で3つ挙げた ―― もう1つある

交絡・逆因果・偶然。説明が足りなかったのが 媒介

  • 交絡: X←Z→YX \leftarrow Z \rightarrow Y XとYの間に矢印がない → 因果ではない
  • 媒介: X→M→YX \rightarrow M \rightarrow Y 矢印でつながっている → 因果である

媒介は「因果の一種」

ほとんどの因果は何かを媒介する
運動→体重減→血圧低下/教育→収入→健康
→ 「媒介だから因果でない」とすると、因果がほぼ全部消える

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同じ「雨」で、2つを並べる

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統計だけでは区別できない

交絡 媒介
第三の変数を統制すると 相関が消える 相関が消える
XX に介入すると YY は 動かない 動く

「統制したら消えた」だけでは何も決まらない

決めるのは 時間順序と仕組み
XX より前にあるのが交絡、XX の後に来るのが媒介

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第5回の体重は、どちらだった?

離乳日齢×行動圏 r=0.657r=0.657 → 体重を統制して 0.0510.051

  • 体の大きさが先 → 交絡。離乳に効果はない
  • 離乳が先(離乳が遅い→体が大きい→行動圏が広い) → 媒介。効果はある

数字はどちらでも 0.051

体サイズのほうが根本的な変数だから交絡と読んだ
―― この判断は相関係数の外から持ち込んでいる

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フック:なぜ「一部」で「全体」?

  • 視聴率は全国数千万世帯のうち数百世帯だけ調べる
  • 味噌汁の味見はひと匙で分かる

なぜ一部で全体を語れる?

その裏づけ=中心極限定理

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母集団と標本

  • 母集団:知りたい全体
  • 標本:実際に調べる一部

母集団 μ=5,881 g / σ=13,110 g / 歪度7.60(正規からほど遠い)

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標本平均を2000回くりかえすと…

母集団は歪んでいた。標本平均(n=30)の分布は?

  • 標本平均の平均 ≈ 5,850 g(母平均5,881にほぼ一致)
  • ばらつき SD ≈ 2,300 g(理論値 σ/√n = 2,394)
  • 歪度 7.60 → 約1.5(近づいた。ただしまだ0ではない)

=中心極限定理(CLT)

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n を増やすと「締まる」

標準誤差 SE=σn標準誤差\ SE = \frac{\sigma}{\sqrt{n}}

n を4倍 → SE は半分(精度2倍に4倍のデータ)

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「標本」≠「標本平均の分布」

正規に近づくのは標本平均の分布。標本そのものは歪んだまま。

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ただし「無作為」が大前提

  • 「声の大きい人」ばかり選ぶ → 数を増やしても偏ったまま
  • 空気を読んで答えをそろえる → 独立性が壊れる

数の多さは、偏りを直さない

「たくさん集めた」≠「正しく集めた」

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まとめ

標本平均はCLTで正規分布に従う

だから一部から全体を語れる

ただし無作為抽出が大前提

次回:点推定と区間推定/信頼区間95%の本当の意味