統計学Ⅱ 2026 第4回

第4回 離散確率分布

二項分布・ポアソン分布 ―― 独立な試行を数式に

統計学Ⅱ 2026後期 北星学園大学
小野原 彩香

統計学Ⅱ 2026 第4回

今日のゴール

  1. 確率変数・期待値・分散
  2. 二項分布:独立な試行 回中の成功回数
  3. ポアソン分布:稀な事象の件数(二項→ポアソン)
  4. 前提は「 一定+独立」「発生率一定+独立」。崩れると分布が壊れる
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直感クイズ

10回投げて7回表。イカサマ?

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答え:約17% = ありふれた偶然

公正なコイン(p=0.5)を10回 → 表7回以上:

5〜6回に1回は起きる。イカサマと断じるには弱い


ちょうど7回は 0.117。見ているのは「表が多い側」だけ
(裏が多い側も足す=両側なら 34.4%)

「珍しさ」を確率で測る → 第8〜9回 検定・p値へ

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二項分布 Binom(n, p)

成功確率 の試行を 独立に 回 → 成功回数

Colab:1万セットの実験が理論にぴったり一致(平均5・分散2.5)

前提: 固定/結果は2値/ が毎回同じ/各試行が独立
独立だからかけ算でき、 が一定だからどの回も同じ式で書ける

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期待値と分散は、独立の要り方が違う

( は 成功1・失敗0)とすると

式 独立は要るか
期待値 要らない(期待値は和について常に線形)
分散 独立なら共分散が0 →

これが今日の要点

後で「平均は同じなのに分散だけが約5.4倍」を見るが、偶然ではない
→ 共分散は期待値の式に出てこない。分散の式にだけ出てくる
(独立は、共分散を0にするための十分条件)

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ポアソン分布 Poisson(λ)

一定の時間・空間の範囲で起こる 件数 のモデル
(1日の迷惑電話、1ページの誤植、来客数…)

置いている条件
① 発生率が一定 ② 重ならない区間の件数が独立
③ ごく短い区間に複数件がまとまって起こらない

団体客がまとめて来るなら③、昼と深夜でペースが違うなら①が崩れる
例の名前ではなく、条件が置けるかで判断する

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二項とポアソン、どう使い分ける

二項 ポアソン
場面 が決まっている 件数だけ分かる
パラメータ (平均件数)
前提 固定・ 一定・各試行が独立 発生率一定・区間ごとに独立・集中発生なし

大・ 小( 一定) → 二項はポアソンに近づく

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「 が大きい」とはどのくらいか

に固定して を変え、二項とポアソンの確率の差の最大値を見る

確率の差の最大
10 0.5 0.0706
50 0.1 0.0095
500 0.01 0.0009
5000 0.001 0.0001

ではまるで別物。 なら差は最大でも約 0.0009

「近づく」は近似であって、一致ではない

「差が0.001未満」≠「小数第3位まで同じ」
の確率:二項 0.17635 / ポアソン 0.17547

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もし独立でなかったら?

10人クイズ。1人目はコイン。2人目以降は 8割で直前の人と同じ、
残り2割は自分でコイン(→ 直前と一致する確率は )

どの人も正解する確率は のまま。 そろいやすくなるだけ

平均 分散 全員一致
独立に判断 5.0 2.5 0.2%
8割で真似る 5.0 13.5 38%

平均は同じ。分散は約5.4倍。極端化!

平均が動かないのは、各人の正解確率が0.5に保たれているから
分散が膨らむのは、答えの間に正の相関(共分散)が生まれたから

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「独立でない」=「分散が増える」ではない

5組に分け、各組の2人目は必ず1人目と 逆 の答えを出すとすると

  • 一人ひとりの正解確率は のまま
  • どの組もちょうど1人が正解 → 正解者数は いつも5人・分散0

独立ではないのに、独立なとき(2.5)より小さい

何が起きるかは、相関の向きで決まる

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これが今期の背骨

独立が崩れる → 二項分布の前提が壊れる
→ 各人の正解確率は同じでも、正解者数は二項分布で予測できない


今日のモデルでは、全員不正解が増えるのと同じだけ全員正解も増える
→ 「集団が間違えやすくなった」とまでは、まだ言えない
示せたのは 結果が極端に振れやすくなる こと


この依存が、情報の集約や多数決の信頼性にどう関わるか
→ 第12回 情報カスケード/第13回 コンドルセの陪審定理

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今日の課題

二項/ポアソンの計算・使い分け(自動採点)

+「独立の前提が崩れると何を間違えるか」(記述)

次回:正規分布の数理

なぜ世界は正規だらけ? 答えはまた「独立」