統計学Ⅱ 2026 第6回

第6回 中心極限定理の再考

CLTの魔法に隠れた「独立」という前提

統計学Ⅱ 2026後期 北星学園大学
小野原 彩香

統計学Ⅱ 2026 第6回

今日のゴール

  1. CLT:歪んだ母集団でも 独立な標本平均は正規へ
  2. 標準誤差 、その前提は独立
  3. 相関すると本当のばらつきが SE より大きい
  4. nを増やしても相関も偏りも消えない
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先に区別 ―― よく混同される2つ

何を言っているか
大数の法則 を大きくすると、標本平均が母平均 μ に近づく
中心極限定理 を大きくすると、標本平均の分布の形が正規に近づく

前者は「どこに寄るか」、後者は「どう散らばるか」

推定ができるのは前者のおかげ
誤差の大きさが言えるのは後者のおかげ
―― どちらも 独立 が前提

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CLTの復習

母集団=指数分布(平均10・右に長い裾、正規でない)
そこから独立に n=30 を選んで平均、を1万回


→ 標本平均はきれいな正規!

ばらつき(標準誤差)も理論どおり:

ここまではⅠの復習

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契約書の細かい字

「独立に n=30 を選んで」 ← ここが効く

回答者が隣を気にして似た回答(空気を読む)=相関

n=30, σ=1 標本平均のばらつき
素朴な SE σ/√n 0.183
実際(独立 ρ=0) 0.183 ← 一致
実際(相関 ρ=0.3) 0.570 = 約3倍
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相関すると何が起きるか

本当のばらつきは σ/√n の 約3倍

→ 実際はずっと不確実なのに、σ/√n を信じると
過剰に自信を持つ


検定なら 偽の有意差
区間推定なら 狭すぎる信頼区間(第7回)

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最大のワナ:nを増やせば解決?

n 独立 ρ=0 相関 ρ=0.3
30 0.183 0.570
3000 0.018(ほぼ0) 0.542(下がらない)

相関は で 下げ止まる

3000人集めても精密にならない

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もう1つ、nで直らないものがある

ここまでは標本の中の相関。もう1つは誰を選んだか

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1936年 ―― 240万人を集めて18ポイント外した

米大統領選。Literary Digest 誌は約1,000万通を送り 約240万通を回収

値
この での理論上の標本誤差 ±0.06%
実際のずれ 4割強と予測 → 実際は6割超。約18ポイント

理論上の標本誤差の約280倍、外している。 原因は ではない

  • 名簿の偏り:電話帳・雑誌購読者名簿 → 高所得層=共和党支持に偏る
  • 無回答バイアス:回収率は2割強。返した人と返さない人は同じでない
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割当法は、無作為抽出の代わりにならない

年齢や性別の構成を母集団に似せて集める方法

  • 無作為に抽出する → 結果として母集団に似てくる
  • 母集団に似せて抽出する → 無作為抽出にはならない

似せられるのはあらかじめ分かっている特性だけ
調査の目的は分かっていない特性を知ること
→ 肝心の知りたい特性のほうが偏る

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n は2つを直さない

  • 標本の中が相関 → 実効標本サイズは で頭打ち
  • 抽出が偏る → いくら増やしても偏ったまま

数の多さは、独立性も代表性も買えない

「みんなが言っているから正しい」も同じ構造(第12〜13回)

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今期の核心

空気を読んで似た答え →
人数を集めても、独立な少人数ぶんの情報しかない


「大勢が賛成だから確か」は、
その大勢が互いを見て合わせているなら 無根拠

→ 第13回 コンドルセの陪審定理
(独立な多数は賢い、空気を読む多数は賢くない)の正体

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今日の課題

CLTの前提の説明(自動採点)

+「独立でないと推測は何を間違えるか」(記述)

次回:区間推定の理論

独立でない標本では「95%」が嘘になる