1何のための手法か
「どれがどれから受け継いだか」を問いたいが、系統樹を仮定できないとき。
入力は距離行列 \(D\) ひとつである。\(n\) 個の対象について、互いの隔たりが測れている。問いは、これらの対象のあいだに系譜の構造があるかという点にある。
小野原・矢野 (2014) は、論文にこの問いを当てている。論文を書くとき、著者は先行研究を参照し、特殊な事情がない限り用語や言い回しは以前の論文のものを踏襲する。だとすれば、同じ分野・同じテーマを扱う論文のあいだには系譜があると考えられる。ここから、2つの学術誌に投稿された論文群が、語彙の上で別系統をなしているかを問うことができる。
ただし、ここで系統樹を当てはめるのは強すぎる。樹形は「どの対象も唯一の親から分かれた」という構造を仮定するが、論文のあいだに生物のような正確な継承があるとは限らない。系統ネットワークは、この仮定を緩めて矛盾する信号をそのまま図に残すための道具である。
混態(contamination)とは
論文は、系統ネットワークを「系統推定の結果を、混態を許すネットワークの形で示したもの」と定義している。混態とは、生物系統学で言えば混血、複数の系統が融合する状態を指す(矢野 2012)。系統樹では表せないこの状態を、ネットワークは平行な枝の組(箱)として描く。
2起源
近隣結合法と分割分解、2つの系譜が合流してできた。
- 近隣結合法(Saitou & Nei 1987) 距離行列から系統樹を作る方法。各段階で枝長の総和を最小にする組を選んで結合していく。距離ベースの系統推定として最も広く使われている。
- 分割分解(Bandelt & Dress 1992) 距離を分割(対象集合の二分割)の重ね合わせに分解する理論。矛盾する分割が同時に支持されるとき、それを樹形に潰さずネットワークとして描ける。ただし対象数が増えると計算が重く、細かい構造を出しにくい。
- Neighbor-Net(Bryant & Moulton 2003) 両者を合わせた方法。近隣結合法と同じ凝集的な手続きで対象を順に並べ、得られた循環順序に整合する分割だけを取り出す。これにより計算量を抑えつつ、数百の対象でも平面に描けるネットワークが得られる。
文化への応用
系統学的方法とは、複数の事象を単に分類するのではなく、その背後に系譜の関係を想定する方法であり、その数理は主に進化生物学の分野で生み出されてきた(中尾 2012)。写本・連歌・言語・工芸品といった文化資料への応用は「文化系統学」と呼ばれ、矢野 (2012) は連歌撰集『老葉』の諸本の系譜にこの方法を当てている。小野原・矢野 (2014) はその枠組みを学術論文に向けたものである。
3数学的にどこから来ているか
距離を分割の重ね合わせで近似する。係数を求めるのは非負最小二乗である。
対象集合 \(X\) の分割 \(S = \{A, X \setminus A\}\) に対し、分割距離 \(\delta_S\) を次のように定める。\(i\) と \(j\) が分割の別側にあれば 1、同じ側にあれば 0 である。
\(\alpha_S\) … 分割 \(S\) の重み。ネットワーク上では枝の長さとして描かれる
\(\mathcal{S}\) … 採用する分割の集合
\(d_0\) … どの分割でも説明できない残り(split-prime residue)
樹形とネットワークの違いは、分割集合の性質にある
採用した分割がどの2つを取っても両立する(一方の片側がもう一方の片側に含まれる)とき、この表現はちょうど系統樹になる。両立しない分割が同時に正の重みを持つとき、それを樹形に潰さず平行四辺形(箱)として描いたものがネットワークである。箱の幅がその分割の重みにあたる。
Neighbor-Net は、対象を円周上に並べる順序をまず決め、その順序で連続する区間になる分割だけを候補にする。この制限により、得られるネットワークは必ず平面に描ける。
重みを求めているのは最小二乗である
観測された距離と、分割の重ね合わせで再現した距離とのずれの二乗和を最小にする。制約は \(\alpha_S \ge 0\)(枝の長さは負にならない)だけである。
これは観点1(幾何)の中心にある式そのものである。回帰では設計行列 \(X\) の列が説明変数だったが、ここでは各列が1つの分割の指示関数になっている。最小にしているものは変わらない。違うのは、何を基底に取るかと、係数に非負制約が付くかという点だけである。
\(\mathbf{d}\) … 距離行列の上三角を縦に並べたベクトル
\(\Delta\) … 列が分割距離 \(\delta_S\) に対応する行列
4定義と仮定
入力は距離だけ。だからこそ、距離の作り方がすべてを決める。
- 入力は距離行列のみ 対象の中身は見ない。語の頻度から距離を作れば、あとは距離だけが結果を決める。
- 系譜の存在は仮定しない 樹形を当てはめないので、「どの対象も唯一の親を持つ」という構造は要求されない。矛盾する信号は箱として残る。
- 平面に描けることを優先している 循環順序に整合する分割だけを採るという制限は、可視化のための制約であって、データから導かれるものではない。
- 枝の長さには尺度がある 分割の重みがそのまま枝の長さになるため、図にはスケールバーが添えられる。小野原・矢野 (2014) の図8には 0.01 のスケールが付いている。
枝の確からしさは、ブートストラップで測る
分割の重みは、その枝がどれだけ長いかを表すが、その枝がそもそも安定して現れるかは表さない。これを見るために、データから標本を取り直して系統推定を繰り返し、同じ枝が何回現れたかを数える手続きが併用される。
小野原 (2013) はこの値を次のように定義している。「この信頼度は、\(n\) 回の系統推定を行った際に、その信頼度の数字が記載された枝上の先端側にある枝形が \(n\) 回の内、何回発生するかについて割合で示したものである」。方言研究の一連の分析では、いずれも \(n = 1000\) が用いられている。図の枝の上に書かれた数字がこの割合(%)にあたる。
この数字は枝ごとに付く。ネットワーク全体が正しいかどうかを1つの数で表すものではない。
5この研究での使い方
同じ手法が、論文の系譜にも、方言の地域差にも当てられている。
(A) 2つの学術誌を、語彙の上で比べる ―― 小野原・矢野 (2014)
ただし入力の作り方が両者で違う。その食い違いは第6節で扱う。
- 『計量国語学』側のデータ 本文の電子化されたものがないため、学会ウェブサイトで公開されている題名とキーワードのみを用いた。1957年から1987年までが CSV 形式で配布されている。
- 1つのテキストに束ねる この題名とキーワードを一括で1つのテキストとみなし、形態素解析して名詞のみを取り出し、頻度データにした。
- 語の選択 頻度の高いものから、減少率が安定するまでの30件を選んだ。『行動計量学』側で用いた標準偏差による選択とは手順が異なる。題名とキーワードのみであることから、あらかじめ重要な名詞だけが扱われていると見なしたためである。
- 行列の作成 選んだ30語について『行動計量学』の論文30編の頻度を合わせ、テキスト31編 × 名詞30件の表に加工した。31編目が『計量国語学』をまとめた
reskkである。 - Neighbor-Net この表から距離を作り、系統ネットワークを構築した(図8)。
読み取られたこと
枝の長さと分かれ方を見ると、1957年から1987年にかけて『計量国語学』で頻繁に使われた名詞と、1974年以降の『行動計量学』で使われた名詞は比較的異なることが分かる。両誌はそれぞれ違うテーマを扱ってきた、という読みである。
しかし一部の論文は reskk の近隣の枝から伸びていた。論文は 1974_03、1978、1982、1985_02、1990、1995_01、2003_01、2003_02、2003_04 の9編を挙げている。
外部の情報で、布置を検証している
近い位置にあった論文の筆者を調べたところ、1974_03、1978、1982、1985_02、1990、1995_01、2003_01 の7編は、『計量国語学』にも投稿したことのある著者であることが判明した。
これは重要な手続きである。ネットワーク上の近さは、語彙の頻度から作った距離が近いというだけのことで、それ自体は系譜の証拠ではない。著者という、分析に使っていない情報と突き合わせることで、布置が偶然ではないという裏づけが得られている。距離だけを入力とする手法では、こうした外部検証が結果の信頼性を支える。
ただし、挙げられた9編のうち著者が確認されたのは7編である。2003_02 と 2003_04 については同様の記述がない。近さの説明が全てついたわけではない。
(B) 方言の地域差を、系統としてとらえる
論文の比較は、この手法の応用のひとつにすぎない。小野原は方言研究でこの手法を継続して使っており、対象は岐阜県揖斐川上流域の語彙と、香川県小豆島のアクセントである。入力の作り方も、読み取る対象も、論文の場合とは異なる。
- 記述研究のデータを借りる Hattori (1973) の日本語方言200項目のうち、山田 (1978, 1980) が報告した21地点分を用いる。自分で採取した資料ではなく、すでに印刷されている記述研究の表を、定量的に分析し直すという設計である。
- 0と1に置き換える 地点ごとに、その音形・語形があれば 1、無ければ 0 とする行列を作る。
- Gower 距離を求める 2地点の配列を突き合わせ、異なる要素の数を全要素数で割る。小野原 (2013) は、19要素のうち6個が異なる例について \(6/19 = 0.316\) と計算を示している。
- Neighbor-Net を描く SplitsTree4 を用いる。
- ブートストラップで枝を評価する 1000回の繰り返しにより、徳山村とそれ以外が 86.1%、今庄・池田とそれ以外が 98.1%、東京・京都・木之本が 98.6% の信頼度で分かれた(小野原 2012、小野原 研究論文)。
読み取られたこと
系統上で徳山村が他の集落から隔絶すること、そして地理的に近接している地域は系統上でも近接し、地理的に離れている地域は系統上でも離れた場所に位置することが確認された。系統上でまとまる集落の一部は、そのまま村の単位に相当している。
さらに、系統分類の結果を分類コードとして次の分析に渡し、集落を分ける要因となっている語彙をランダムフォレストで抽出している。ランダムフォレスト のページで扱っているのがこの部分である。
同じ地点の、違う時点を、1つのネットワークに並べる
小豆島の事例では、中井 (1998) が1993年から1996年にかけて調査した9地点のアクセントと、2012年に同一地点で行われた調査の結果を、それぞれ別の分類群として1つのネットワークに入れている。「家浦 (1998)」と「家浦 (2012)」が別の葉として並ぶ。系譜の枝分かれではなく、経年変化を系統として読むという使い方である。
この設計を支えているのが、Neighbor-Net が無根である点である。小野原 (2013) は「Neighbor Net は無根の系統ネットワークであるため、共通基語すなわち、ただひとつの祖語を仮定して良いかわからない日本語アクセントの分析には適切である」と述べている。根を置かないので、どれが祖先でどれが子孫かを決めずに済む。同じ地点の2時点を並べても、手法の側は矛盾を起こさない。
ただし、読み取れるのは布置だけである。1998年の家浦と2012年の家浦が近いか遠いかは読めるが、どちらがどちらへ変化したかは、ネットワークからは出てこない。変化の向きは、言語学的な議論の側から与えられている。
系統推定の出力を、次の分析の入力にする
「方言分布データの数理的分析」では、系統推定がそれ自体の結論ではなく、合成変数を作るための工程として使われている。18地点・47項目の基礎語彙から系統推定を行い、そこで算出された集落同士の距離に多次元尺度構成法をかけ、第1軸を1本の変数に縮約する。その変数を目的変数として、戸数・人口・田の面積・畑の面積・石高・標高を説明変数とする空間誤差モデルに当てている。
言語の側を1つの数にまとめてから、言語外の条件との関係を測る、という順序である。この後半にあたる空間誤差モデルは 線形混合モデルとAIC のページで扱っている。
10年分のファイルが残っている
この手法は一度きりの試みではない。手元の作業ファイルには、2010年から2019年までの各年に分けて157個の NEXUS ファイルが残っている。ブロックの内訳は分類群・形質・距離行列・分割・ネットワークで、第3節に書いた「距離を分割に分け、ネットワークとして描く」という手順が、そのままファイルの構造として現れている。
たとえば2010年のあるファイルは、110の分類群について距離行列を持ち、そこから 217 個の分割と、218 頂点・217 辺のネットワークが書き出されている。同じファイルには CYCLE ブロックがあり、110 の分類群を円周上に並べた順序がそのまま記録されている。第3節で述べた循環順序が、計算の途中経過として保存されているということである。
6限界
論文自身が、手法の選択という形で留保を表明している。
継承パターンが存在するかは、そもそも不明である
論文は次のように述べている。「本分析では、『行動計量学』論文と『計量国語学』論文という異なる2つの系譜を持つ論文を対象としていることと、そもそも先行論文—後発論文間で、生物で見られるような正確な継承パターンが存在するかは不明であるため、混態を許すネットワークの形で考察するのが望ましいと考えられる」。
系統樹ではなくネットワークを選んだこと自体が、この留保の表明になっている。手法の選択が、主張できる範囲を先に限定しているという意味で、誠実な構成である。逆に言えば、このネットワークから「AがBを受け継いだ」と読むことはできない。読めるのは、語彙の上での遠近と、その遠近が樹形に収まらないことだけである。
図の上の距離と位置には意味がない
論文は図8について「枝の長さと枝の分かれ方のみが意味を持つ」と明記している。ノードが紙面のどこに置かれているか、2つのノードを結ぶ直線距離がどれくらいか、といったことは読んではいけない。
同じ注意は、同論文の共起ネットワーク(図6・図7)にも付されている。そちらは「エッジの太さのみが意味を持ち、エッジの長さ、ノードの位置関係などには意味が無い」とされる。ネットワーク図は、どの量が意味を持つかが図ごとに違う。凡例を読まずに見た目の近さを解釈すると誤る。
比べている2つの入力が、揃っていない
31編のうち30編は個別の論文だが、31編目の reskk は31年分の題名とキーワードを1つに束ねたテキストである。単位が揃っていない。
データの性質も違う。『行動計量学』側は本文(英語要旨・参考文献・数式・図表などを除去したもの)、『計量国語学』側は題名とキーワードのみである。語の選び方も、前者は標準偏差の大きい順、後者は頻度の高い順で、手順が異なる。時期も、『計量国語学』は1957–1987年、『行動計量学』は1974年から論文執筆時点までで、重なりは一部にすぎない。
これらは論文中にすべて明記されており、隠されてはいない。ただし、ネットワーク上で reskk と各論文の距離を読むとき、その距離のうちどれだけが内容の違いで、どれだけがデータの作り方の違いによるものかは分離できない。
採用する分割の集合は、可視化の都合で決まっている
Neighbor-Net が候補にするのは、先に決めた循環順序に整合する分割だけである。この制限は、平面に描けるネットワークを得るために置かれたもので、データから導かれたものではない。順序の決め方が変われば、採用される分割の集合も変わりうる。ネットワークの形を「データが示した構造」として読むときには、この設計上の制約を踏まえる必要がある。
言語に系統樹を当てるのが難しいから、ネットワークを使っている
生物の系統は、基本的には親から子への垂直な継承である。だから樹形が当てはまる。ところが言語では、隣接する地域から語形や音調を借用することが日常的に起こる。水平に伝わった要素は、樹形の上では「どちらの親から来たか」を決められない。
この手法を選んでいる理由はそこにある。第1節に書いた混態を許すという性質は、言語データにとっては例外的な配慮ではなく、前提そのものである。矛盾する信号を箱として残せるからこそ、借用の混ざった分布を樹形に潰さずに描ける。
逆に言えば、箱が大きいこと自体は情報である。それを無視して「おおよそこういう樹形だ」と読み替えると、この手法を使った意味がなくなる。
ブートストラップ値は、歴史的な正しさの確率ではない
枝に付いた 86.1% という数字は、データから標本を取り直したとき、その枝が何回現れたかの割合である。手元のデータが同じ傾向を繰り返し示す度合いを測っているにすぎない。
これは「その分岐が歴史的に起きた確率が 86.1%」という意味ではない。データの取り方に偏りがあれば、偏った構造が安定して再現され、高い値が出る。値が高いことはデータが安定していることの証拠であって、推定が真実に近いことの証拠ではない。
言語年代学の前提は、あえて引き受けていない
基礎語彙を系統推定に使うという発想は、Swadesh に始まり服部四郎が発展させた言語年代学の系譜にある。しかし小野原 (2012) は、その前提を引き受けないと明示している。論文は問題点を次のように整理している。「言語年代学が、言語変化の速度を一定としたことや、比較する二言語が比較言語学的に同系かつ言語間に分岐後の接触が無いことを前提としたことにより、観察される言語現象と言語年代学の理論が合致しないという事態が数多くあった。このため、基礎語彙から語彙の分出年代を求める研究は下火となった」。
そのうえで、使い方を限定している。「基礎語彙については、言語年代学としての使い方に問題があるとして、敬遠されがちである。しかしながら、地域で話される語彙について、類似性を抽出するという限定した使用においては、今回の分析において、有効な結果が得られたと言える」。
つまり、このネットワークから年代は読めない。枝の長さは語彙の異なり方であって、分岐からの経過時間ではない。一定速度の仮定を置いていないのだから、置いていない量を読んではいけない。
7出典とデータ
- 小野原彩香・矢野環 (2014)「雑誌『行動計量学』における言語に関する投稿論文の傾向——投稿論文の時系列変化と『計量国語学』論文との比較」岸江信介・田畑智司 編『テキストマイニングによる言語研究』ひつじ研究叢書〈言語編〉第121巻、pp. 1–20、ひつじ書房。ISBN 978-4-89476-695-2(2014年12月3日 初版1刷)
- 『行動計量学』側のデータは J-STAGE 上で公開されている論文。『計量国語学』側は学会ウェブサイトで公開されている題名とキーワード(1957–1987年、CSV形式)。前処理は MeCab(形態素解析)、MTMiner および RMeCab(集計)による。
方言研究の側
- 小野原彩香 (2012)「揖斐川上流域の語彙に関する系統推定」情報処理学会研究報告 IPSJ SIG Technical Report, Vol.2012-CH-94 No.4(2012年5月26日)。所属は同志社大学大学院 文化情報学研究科。
- 小野原彩香「揖斐川上流域における語彙の類型と地理的分布」研究論文。手元の刷りには誌名・巻号・発行年の記載を確認できなかったため、書誌は題名までにとどめる。
- 小野原彩香「方言分布データの数理的分析」。所属は同志社大学大学院 文化情報学研究科。同じく、刷りから発表媒体・巻号を確認できなかった。
- 小野原彩香 (2013)『数理的アプローチからの言語変化と外言語的要素との関わりに関する研究』同志社大学大学院 文化情報学研究科、2013年度。第3章(事例1)が小豆島のアクセント、第5章(事例3)が揖斐川上流域の基礎語彙、第8章(事例6)が基礎語彙と外言語的要素の多変量解析にあたる。
- 方言データの出典は Hattori (1973) の日本語方言200項目、および山田 (1978, 1980) による揖斐川上流域・福井県今庄・池田・滋賀県木之本の報告。小豆島のアクセントは中井 (1998) と2012年の調査による。系統推定の描画は SplitsTree4。
小豆島の2012年調査は、科学研究費 基盤研究 (A) 23242024「方言分布変化の詳細解明——変動実態の把握と理論の検証・構築——」(代表:大西拓一郎)の一環として2012年3月に実施されたもので、徳島大学日本語学研究室、岸江信介教授主導による。
手法の文献
- Saitou, N. & Nei, M. (1987) The neighbor-joining method: a new method for reconstructing phylogenetic trees. Molecular Biology and Evolution, 4(4), 406–425. academic.oup.com
- Bandelt, H.-J. & Dress, A. W. M. (1992) A canonical decomposition theory for metrics on a finite set. Advances in Mathematics, 92(1), 47–105. sciencedirect.com
- Bryant, D. & Moulton, V. (2003) Neighbor-Net: an agglomerative method for the construction of phylogenetic networks. Molecular Biology and Evolution, 21(2), 255–265. academic.oup.com
- 矢野環 (2012)「『老葉』に対する系統学的アプローチ——宗祇による連歌の系譜」中尾央・三中信宏 編『文化系統学への招待:文化の進化パターンを探る』勁草書房。ISBN 978-4-326-10216-7
- 中尾央 (2012)「文化の過去を復元すること」同書所収。
- Gower, J. C. (1971) A general coefficient of similarity and some of its properties. Biometrics, 27(4), 857–871. jstor.org
- Huson, D. H. & Bryant, D. (2006) Application of phylogenetic networks in evolutionary studies. Molecular Biology and Evolution, 23(2), 254–267. academic.oup.com(SplitsTree4)
- Swadesh, M. (1952) Lexico-statistic dating of prehistoric ethnic contacts: with special reference to North American Indians and Eskimos. Proceedings of the American Philosophical Society, 96(4), 452–463. jstor.org
- Hattori, S. (1973) Japanese dialects. In T. A. Sebeok (ed.) Current Trends in Linguistics, vol. 11: Diachronic, Areal and Typological Linguistics, pp. 368–400. The Hague: Mouton. degruyterbrill.com
- 山田達也 (1980)「福井県今庄、池田方言及び滋賀県木之本方言の基礎語彙について——徳山村方言に関連して」『名古屋市立大学教養部紀要 人文社会研究』24、23–34頁。CiNii
- 山田達也 (1978)「揖斐川上流域における基礎語彙について」『名古屋市立大学教養部紀要 人文社会研究』22、33–66頁。
Hattori (1973) の巻号は、小野原 (2012) の参考文献欄では「Vol.1, no.11」と記されている。原典は Current Trends in Linguistics の第11巻であり、ここでは書誌の側に合わせた。山田 (1978) については、上の各論文の参考文献欄に一致した記載があるものの、書誌データベース上での確認には至らなかった。
小野原・矢野 (2014) の参考文献欄では Bryant and Moulton (2003) の巻号が「Molecular Biology and Evolution 21」と記されている。原論文は 2003 年にオンライン公開され、誌面は 21 巻 2 号 255–265 頁である。
この手法がどの観点に属するか
Neighbor-Net は確率モデルを立てない。距離を分割の重ね合わせで近似し、再現誤差の二乗和を最小にすることで枝の長さを決める。非負制約の付いた最小二乗であり、設計行列の列が分割の指示関数になっただけで、最小化しているものは回帰や主成分分析と変わらない。7つの観点を式で読むの観点1(幾何・最小二乗)に属する。
同じ方言データを、樹形そのものを確率変数として扱う立場から解析した例が アクセント類統合のベイズ系統推定(観点3)にある。距離に落としてから描くか、生成過程を書いて事後分布を取るかという、対照的な2つの入り方を並べて読める。
このページは、小野原が実際の研究で使っている手法を、同じ分野の読み手に向けて整理したものです。数値と引用はすべて出典に印刷された記述から取り、推定や概算は記載していません。
同じ論文で併用された対応分析については 対応分析、方言研究で併用されたランダムフォレストは ランダムフォレスト、距離の作り方を変えた場合は 正規化圧縮距離、系統推定の出力を受け取る側は 線形混合モデルとAIC にあります。手法の位置づけの全体像は 7つの観点を式で読む、どの授業回がどの観点に当たるかは 手法と数学の地図 にあります。