1幾何(最小二乗)
点の集まりに、いちばん近い線(面)を引く。ずれの二乗和を最小にする。
\(\mathbf{y}\) … 観測した値を縦に並べたベクトル
\(X\) … 説明変数を並べた行列(設計行列)
\(\lVert\cdot\rVert^2\) … 二乗和。ずれの大きさを測るものさし
解は連立一次方程式になる
正規方程式。左辺の行列を分解(QR・Cholesky)して解く。ここが線形代数Ⅰの守備範囲。
解は直交射影である
\(H\) は射影行列。予測値は、観測値を「説明変数が張る空間」に垂直に落とした影である。
主成分分析も同じ発想
分散が最大になる方向を探すと、共分散行列の固有ベクトルに行き着く。
k-means も二乗和の最小化
まとまりの中心からの距離の合計を小さくする。確率モデルは立てない。
この観点に当たる、実際の研究で使っている手法
研究で使う手法:Gower距離 ―― 名義尺度のアクセント型から、集落間の距離を作る
研究で使う手法:対応分析 ―― 行と列を同じ平面に置き、カイ二乗距離で布置する
研究で使う手法:系統ネットワーク(Neighbor-Net)―― 距離行列を分割に分け、混ざりを許して描く
研究で使う手法:主成分分析 ―― 分散が最大になる方向を探すと、固有値問題になる
研究で使う手法:媒介中心性 ―― 交通網の最短経路から、集落の行きにくさを測る
2頻度論(標本変動・推定・検定)
母集団のパラメータは固定された値で、ランダムなのは標本のほうだと考える。標本を取り直したときのばらつきで、推定量や検定の質を測る。パラメータを選ぶ原理としてよく使われるのが最尤法だが、尤度はベイズでも使う。
\(p(x_i\mid\theta)\) … パラメータ \(\theta\) のもとで、その観測が出る確率(密度)
\(\ell(\theta)\) … 対数尤度。掛け算を足し算に直すために対数を取る
\(\hat{\theta}\) … 最尤推定量。尤度を最大にする値
最大化の条件は微分=0
この左辺をスコア関数という。解けない場合はニュートン法などで数値的に解く。
推定のばらつきは情報量で決まる
二階微分(曲がり具合)が大きいほど、推定は安定する。信頼区間はここから出る。
正規誤差を仮定すると幾何と一致する
対数を取ると二乗和の最小化そのものになる。最小二乗と最尤が同じ答えを出すのはこのため。
頻度論が評価するのは、手続きの当たり率
確率がかかっているのは区間のほうで、\(\theta\) は動かない。検定の第一種の誤りも、同じく「手続きを繰り返したときの割合」として定義される。
この観点に当たる、実際の研究で使っている手法
研究で使う手法:ベータ回帰 ―― 0と1のあいだの割合を、区間の外に出さずにモデル化する
研究で使う手法:Rarefaction ―― 標本の大きさを揃えて、語彙の豊かさを比べる
研究で使う手法:検出力シミュレーション ―― 効果があるとき、それを検出できるか
研究で使う手法:Mantel検定 ―― 距離行列どうしの対応を、行と列の同時並べ替えで検定する
3ベイズ
観測前の知識とデータを合わせて、信念を更新する。パラメータのほうが分布を持つ。
\(p(\theta)\) … 事前分布。データを見る前の信念
\(p(D\mid\theta)\) … 尤度。頻度論で最大化していたもの
\(p(\theta\mid D)\) … 事後分布。更新後の信念
予測も分布で出す
1つの値ではなく、これから出るデータの分布を返す。不確実性を持ったまま予測する。
分母の積分が難しいので近似する
変分推論は、この下界を最大にする \(q\) を探す。MCMCは積分を標本で置き換える。
仮説が有限個なら、足し算と割り算で計算できる
表の確率が \(1/4\) か \(3/4\) のどちらかで、事前をそれぞれ \(1/2\) としたとき。分母は積分ではなく有限個の足し算。この段階なら、微積分を学ぶ前でも事前・尤度・事後の更新を実際に計算できる。連続なパラメータに移ると積分が必要になり、近似が要る。
Ridge回帰はベイズのMAP推定
事前分布に正規分布を置くと、罰則付き最小二乗と同じ式になる(\(\lambda = \sigma^2/\tau^2\))。
この観点に当たる、実際の研究で使っている手法
研究で使う手法:ベイズ推定(Stan / brms)―― 事前分布・収束診断・事後分布の読み方
研究で使う手法:ICAR 空間ランダム効果 ―― 隣接関係を事前分布に入れる
研究で使う手法:アクセント類統合のベイズ系統推定 ―― 統合という現象そのものを突然変異として書く(方法論・実装:高橋卓也氏)
4学習理論(リスク最小化)
手元のデータではなく、まだ見ていないデータでの損失を小さくしたい。確率モデルは立てなくてよい。
\(P\) … データが従う分布。中身は分からないが、存在すると考える
\(\ell\) … 損失関数。予測が外れたときの痛み
\(f\) … 学習する関数(モデル)
手元で計算できるのは経験リスクだけ
これが経験リスク最小化(ERM)。学習とは、この最小化のことだと割り切る。
差を押さえるのが汎化境界
モデルの自由度が高いほど、右の項は大きくなる。正則化は、この項を抑える操作にあたる。
SVMは余白を最大にする
境界から最も近い点までの距離を広く取る。確率を一切仮定しない分類法。
授業で扱う回:いまのところなし
この観点に当たる、実際の研究で使っている手法
研究で使う手法:LOO 感度分析 ―― 抜く単位を、従属関係のまとまりに合わせる
5情報理論
短く符号化できることを、よい説明とみなす。モデル選択の物差しになる。
\(H(p)\) … エントロピー。その分布の予測しにくさ
\(D_{\mathrm{KL}}\) … 真の分布 \(p\) をモデル \(q\) で表したときの、無駄な符号長
等号 … 2つの分布が一致するときだけ0になる
交差エントロピーは最尤と同じもの
分類モデルの損失に交差エントロピーを使うのは、最尤推定をしているのと同じである。
AICは当てはまりと複雑さの釣り合い
\(k\) はパラメータ数。当てはめを良くしても、パラメータを増やした分は差し引かれる。
決定木は情報の増え方で分ける
分けたことで不確かさがどれだけ減ったかを測り、いちばん減る分割を選ぶ。
授業で扱う回:統計学Ⅰ 第11回
この観点に当たる、実際の研究で使っている手法
6ゲーム・敵対
競い合う二者の釣り合いとして学習を捉える。片方が良くなると、もう片方が困る。
\(G\) … 生成する側。本物らしい偽物を作りたい
\(D\) … 見分ける側。本物と偽物を区別したい
\(\min\max\) … 片方の最善手に対して、もう片方が最善手を返す。釣り合った点が解
最悪の場合に備える形も同じ構造
想定しうる分布のうち、最も都合の悪いものでの損失を小さくする(分布頑健最適化)。
音声のディープフェイクも同じ構図
偽造と検出は、終わらない追いかけっこになる。どちらか一方だけの評価では意味がない。
授業で扱う回:音声処理と認識 第13回(準備中)
この観点に当たる、実際の研究で使っている手法
7因果
介入したらどうなるかを問う。予測とは別の種類の問いで、データだけからは決まらない。
\(Y(1)\) … 処置を受けたときの結果
\(Y(0)\) … 受けなかったときの結果
問題 … 1人について、どちらか一方しか観測できない
無作為化がないと使えない仮定
処置の割り当てが、共変量 \(X\) を条件づければ結果と独立であること。観察データでは仮定であって、検証はできない。
調整の公式
層ごとに効果を見て、層の大きさで重みを付けて足す。シンプソンのパラドックスはこの重み付けの問題。
回帰での調整は射影である
交絡を避けるために別の変数 \(Z\) を使う。計算は結局、線形代数の問題になる。
この観点に当たる、実際の研究で使っている手法
研究で使う手法:見かけ上の時間法 ―― 世代差を時間変化の代用として読む
同じ式が、別の観点で読める
Ridge回帰 幾何では「罰則つきの最小二乗」、ベイズでは「正規分布を事前に置いたときのMAP推定」、学習理論では「モデルの複雑さを抑える操作」。3つとも同じ式 \(\min_\beta \lVert \mathbf{y}-X\beta\rVert^2 + \lambda\lVert\beta\rVert^2\) を指しています。
交差エントロピー 最尤の負の対数尤度であり、情報理論のKLダイバージェンスの最小化であり、学習理論では損失関数のひとつです。
SVM 学習理論では余白の最大化、ゲームの側から見れば最悪の場合に備える min–max 問題として読めます。
枠組みのもとにした資料:「数学的技法と統計手法・機械学習との関係」(小野原、2025年9月)。式は代表的な形に絞って書いたもので、条件や正則性の仮定は省いています。
どの回がどの世界観に当たるかは 手法と数学の地図、考え方そのものの解説は 統計の考え方ガイド にあります。