一言でいうと

グラフは、データをそのまま写したものではない。区切り方と目盛りを決めた時点で、何が見えて何が隠れるかが決まる。桁が何けたも違う量は、対数の目盛りで見ないと大部分が見えない。

霊長類の体重は、何けたにもまたがる

体重が記録されている霊長類265種のうち、いちばん軽い種は31グラム、いちばん重いヒガシゴリラは149,325グラムです。その差は約4,800倍あります。行動圏の広さ(群れや個体がふだん動きまわる範囲)も、記録のある種の中で約1万4千倍の開きがあります。

こうした量をグラフにするとき、2つの選択がそのまま見え方を左右します。値をどの幅で区切るか、そして目盛りを等間隔の「差」で刻むか「比」で刻むかです。

ヒストグラム
値を幅の等しい区間に分け、各区間に入る種の数を棒の高さで表す図。分布の形を見るために使う。
階級・階級幅
その区間のこと、および区間の幅。ビン、ビン幅ともいう。
対数軸
目盛りが1つ進むごとに値が10倍になる軸。等しい間隔が等しい「比」を表す。
散布図
2つの量を縦軸と横軸にとり、1種を1つの点で打った図。2つの量の関係を見るために使う。

同じ265種を、2通りの目盛りで描く

そのままの目盛り(階級幅 5,000 g)

対数の目盛り(階級幅 0.25 けた)

いちばん軽い種31 g
いちばん重い種149,325 g
1万 g 未満の種234 種(88 %)

左の図では、最初の棒(0〜5,000 g)に158種が入り、残りは右へ細く伸びるだけです。右の図では同じ265種が1つの山にまとまり、いちばん多いのは約5,600〜1万 g の階級(66種)です。

どちらの図も、使っている値はまったく同じです。違うのは横軸の刻み方だけです。左の図が伝えるのは「ほとんどの種は小さく、ごく一部に巨大な種がいる」という事実で、右の図が伝えるのは「種の体重は、比で見ると1つのまとまった分布をなす」という事実です。

階級幅と目盛りを変えてみる
階級幅
階級の数
いちばん多い階級
その階級の種数

ヒストグラムは1つの量の分布を見る図でした。2つの量の関係を見るときは散布図を使います。ここでは、体重と行動圏の広さの両方が記録されている153種を、1種1点で打ちます。

散布図を両対数にしてみる
点にカーソルを重ねると、その種の学名と値が出ます。
点の数
強調した科
左下 1割×1割の枠の点

「左下 1割×1割の枠」は、横軸と縦軸それぞれの表示範囲の下から1割ずつを取った小さな四角です。

しくみ:対数は「差」を「比」に置き換える

対数の目盛りでは、値そのものではなく、その常用対数を等間隔に並べます。常用対数とは「10を何乗するとその値になるか」という数です。

対数の値 = log10(体重)  例:31 g → 1.49、149,325 g → 5.17

31グラムから149,325グラムまでが、対数では1.49から5.17まで、わずか3.7ほどの幅に収まります。100グラムと1,000グラムの間隔と、1万グラムと10万グラムの間隔が同じ長さになります。つまり、対数軸の上での距離は「何倍違うか」を表しています。

分布の左右の偏りを表す歪度(0なら左右対称、正の値が大きいほど右に長い裾を引く)で比べると、体重そのものは 7.60、体重の対数は −0.40 です。対数にすると、ほぼ左右対称の分布になります。

散布図でも同じことが起きます。そのままの値で描くと、少数の大型種や行動圏の広い種が軸の範囲を決めてしまい、残りの点は隅に押し込まれます。両対数にすると、点は左下から右上へ帯のように並びます。2つの量の関係の強さを表す相関係数(03 相関と因果で扱います)も、そのままの値では 0.35、対数どうしでは 0.68 と、目盛りの選び方で変わります。

よくある誤解

「階級幅は好みの問題で、分布の形の読み取りには影響しない」

影響します。体重を1,000 g 幅で区切ると最初の棒は95種ですが、20,000 g 幅にすると階級は8個しかなく、最初の棒に265種中258種が入ります。これでは形はほとんど読めません。反対に幅を細かくしすぎると、棒がまばらになって偶然の凹凸が目立ちます。

「対数にするのは、データを加工してごまかすことだ」

対数をとっても、種の並び順も、どの種がどの種の何倍かも変わりません。変わるのは、目盛りの等しい間隔が「差」を表すか「比」を表すかです。体重のように比で意味を持つ量では、対数軸のほうが事実をそのまま見せます。ただし、軸が対数であることは図に必ず明記します。

「散布図で点が固まって見えるのは、関係が弱いからだ」

そのままの目盛りで体重と行動圏の広さを描くと、153種のうち136種(89 %)が図の左下の1割×1割の枠に収まります。関係が弱いのではなく、軸の範囲が少数の極端な種で決まっているためです。同じ153種を両対数で描くと、はっきりした右上がりの並びが見えます。

「ゴリラのような極端な値は、邪魔なので外して描けばよい」

ゴリラやヒトは測り間違いではなく、実在する種の値です。外すと「霊長類の体重の分布」という事実そのものが変わります。極端な値を残したまま全体の形を見たいときに使うのが、対数の目盛りです。

授業では、この回で扱っています

授業サイトは誰でも見られます。もう少し踏み込みたい人は、各回のページへどうぞ。

データ:Jones, K. E. et al. (2009) PanTHERIA: a species-level database of life history, ecology, and geography of extant and recently extinct mammals. Ecology 90: 2648. 霊長類376種のうち、ヒストグラムは成体の体重が記録されている265種、散布図は体重と行動圏の広さの両方が記録されている153種を使用。