一言でいうと

2つの量がそろって増える(相関がある)ことは、一方がもう一方を引き起こしている証拠にはならない。両方を動かしている第三の変数が隠れていることがある。

寿命と行動圏には、はっきりした相関がある

霊長類の種ごとに、記録されている最長寿命と行動圏の広さ(群れや個体がふだん使う範囲)を並べると、長生きの種ほど行動圏が広いという傾向がはっきり出ます。体重・寿命・行動圏の3つが記録されている100種で、相関係数は 0.65 です。

この関係を見たとき、考えられる説明は1つではありません。

寿命 → 行動圏

長く生きる種は、長い時間をかけて広い範囲を覚え、使うようになる。

行動圏 → 寿命

広い範囲を使える種は、食物を安定して得られ、長く生きられる。

寿命 ← 体重 → 行動圏

体の大きい種ほど長生きで、体が大きいほど広い範囲を使う。寿命と行動圏の間には直接のつながりがない。

3つ目のように、2つの量の両方に影響して見せかけの相関を作る変数を交絡変数(第三の変数)と呼びます。相関係数だけでは、この3つの説明を区別できません。

体重は、寿命とも行動圏とも強く結びついている

まず第三の変数の候補である体重を確かめます。同じ100種で、体重は寿命とも行動圏とも相関係数 0.74 で結びついています。寿命と行動圏どうしの 0.65 より強い関係です。

どちらの軸も対数目盛りです。体重は48グラムから約11万グラムまで、行動圏は数千倍の幅があるため、ふつうの目盛りでは大型の数種だけが図を占めてしまいます。以下の相関係数は、すべて対数(log10)をとった値で計算しています。

体重の影響を取り除いてみる
見る組み合わせ
種の数
体重と横軸の相関
体重と縦軸の相関
そのままの相関
体重を除いた相関

点の色は体重です。薄い青が軽い種、濃い紺が重い種です。破線は、点のならびに最もよく当てはまる直線です。

しくみ:相関係数と偏相関

相関係数 r は、2つの量の直線的な関係の強さを −1 から 1 の数で表したものです。1 に近いほど右上がりの直線に、−1 に近いほど右下がりの直線に点が並び、0 に近いと直線的な関係は見えません。各種の値が平均からどちら向きにずれているかを掛け合わせて平均し、全体の散らばりで割ったものです。

r = Σ(x − x̄)(y − ȳ) ÷ √{ Σ(x − x̄)² · Σ(y − ȳ)² }

第三の変数 z の影響を取り除いた相関を偏相関と呼びます。x と y をそれぞれ z から直線で予想し、予想からのずれ(残差)どうしの相関をとったものです。体験パネルで「体重の影響を取り除く」を選んだときに描いているのが、この残差どうしの散布図です。3つの相関係数から、次の式でも同じ値が求まります。

rxy·z = ( rxy − rxz ryz ) ÷ √{ (1 − rxz²)(1 − ryz²) }
組み合わせ(z=体重)種の数rxzryzそのままの r体重を除いた r
寿命 × 行動圏1000.740.740.650.23
妊娠期間 × 寿命1060.700.750.560.07
寿命 × 群れの大きさ1160.720.610.480.07

3つとも、体重を除くと相関は大きく下がります。r の2乗は「一方の変動のうち、もう一方と直線で連動している割合」の目安で、寿命と行動圏では 0.42 から 0.05 に減ります。見えていた関係の大部分は、体重を通じたものだったと読めます。寿命と行動圏には 0.23 の弱い関係が残っていて、これを体重以外の何が生んでいるのかは、このデータだけではわかりません。

よくある誤解

「相関が強いほど、因果も強い」

相関係数が表すのは、点がどれだけ直線に近く並ぶかだけです。寿命と行動圏の 0.65 は十分に強い相関ですが、体重をそろえると 0.23 まで下がりました。強い相関は、強い交絡からも生まれます。

「体重を除いて相関が消えたから、体重が原因だと証明できた」

偏相関で取り除けるのは、測って式に入れた変数の影響だけです。体重そのものも、近縁な種どうしが似やすいことなど、ほかの要因と絡み合っています。偏相関が示すのは「体重をそろえると関係がほとんど見えない」ということで、原因の特定までは届きません。

「相関が 0 に近ければ、2つは無関係だ」

相関係数は直線的な関係しかとらえません。山なりの関係や、一部の範囲だけで強い関係は、r が小さく出ることがあります。このページで対数をとってから計算しているのも、何桁にもわたる量ではそのままの目盛りだと直線的な関係が見えにくいためです。

「変数を取り除いた相関のほうが、いつも正しい」

何を取り除くかは、因果の筋道についての仮定で決まります。x と y の両方から影響を受けて決まる変数を取り除くと、もともと無関係だった2つの間に見せかけの相関が生まれることがあります。取り除く前に、その変数がどこに位置するのかを考える必要があります。

授業では、この回で扱っています

授業サイトは誰でも見られます。もう少し踏み込みたい人は、各回のページへどうぞ。

データ:Jones, K. E. et al. (2009) PanTHERIA: a species-level database of life history, ecology, and geography of extant and recently extinct mammals. Ecology 90: 2648. 霊長類376種のうち、体重・最長寿命・行動圏の広さがそろう100種、体重・妊娠期間・最長寿命がそろう106種、体重・最長寿命・群れの大きさがそろう116種を使用。相関係数はすべて各変数の常用対数(log10)で計算。