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第05回 相関と因果

10/27(火)Ⅱ講 10:35〜12:15・B402教室

「相関がある」と「原因である」は、まったく違う


この回のゴール

  • 散布図と相関係数 r で2変数の関係を読める
  • 相関 ≠ 因果であることを、交絡・逆因果・偶然の観点から説明できる
  • 相関を見たときに「対抗仮説(第三の変数)」を立てて批判的に検証できる

到達目標との対応:G1(記述)・G2(批判的検証の入口)


1. フック:この相関を信じる?

  • アイスの売上が増えると水難事故も増える」――アイスを禁止すれば事故は減る?
  • チョコ消費量が多い国ほどノーベル賞が多い」――チョコで頭が良くなる?

相関は本物。でも結論はばかげている。なぜそうなるのかを、霊長類データで解き明かす。

そして今日は、ばかげているとすぐには分からない例を扱う。そちらが本番である。


2. 散布図と相関係数 r

2つの量の関係は、点を打った散布図で見るのが基本。その「直線的な関係の強さ」を1つの数にしたのが 相関係数 r(−1〜+1)。

r 意味
+1 に近い 片方が増えると他方も増える(右上がり)
−1 に近い 片方が増えると他方は減る(右下がり)
0 に近い 直線的な関係がない

何桁にもまたがる量は対数で見る

体重・行動圏などは種によって数千倍違う。第3回でやったとおり、こういう量は対数の目盛りで扱う(そうしないとゴリラ1種が図を支配し、アンスコムのIV型になる)。以下の r はすべて対数変換後の値。

体重 と 行動圏:r ≈ 0.68(n=153種)。体の大きい種ほど広い範囲を使う ―― 大きい動物はたくさん食べる必要があるから、というのは納得のいく関係だ。


3. 「乳離れが遅い種ほど、広く動きまわる」?

離乳日齢(子が乳離れするまでの日数)と 行動圏km2 の相関:r ≈ 0.66(n=97種)。

さきほどの体重と行動圏(0.68)とほとんど変わらない強さである。

子育て期間が長い種ほど、広い行動圏を必要とする」――もっともらしい。生態学の論文の見出しになりそうだし、理屈も後付けできる(長く子を連れて歩くから広い範囲を使うのだろう、など)。

だが――本当に離乳の遅さが原因か? ここで立ち止まるのが統計の思考。


4. 交絡を疑え ―― 第三の変数

「乳離れが遅い種」とは、どんな種か。大きい種である。そして大きい種は行動圏も広い。確かめると:

  • 離乳日齢 と 体重 の相関:r ≈ 0.85(ほとんど同じことを測っていると言えるほど強い)
        (体の大きさ)
          /       \
     離乳が遅い    行動圏が広い

チンパンジー(45kg)は離乳まで1,261日=3年半かかり、行動圏は10.85km²。ネズミキツネザル(48g)は離乳40日、行動圏0.01km²。どちらの列も、体の大きさが動かしている。これが 交絡(confounding) だ。

確かめ方:体重を統制する(偏相関)

離乳日齢と行動圏 r
単純な相関 0.657
体重を統制後 0.051(ほぼ0)

離乳の効果は消えた

アイスと水難事故(犯人は「気温」)、チョコとノーベル賞(犯人は「経済的豊かさ」)と同じ構造。 相関を見たら、因果を結論する前に『隠れた第三の変数(交絡)』を疑う。

この分野では、これが最大の落とし穴である

生き物のデータでは、体の大きさがほとんど全部に効く。寿命も、妊娠期間も、行動圏も、集団サイズも、大きい種ほど大きい。だから種どうしを比べると、何と何を組み合わせても相関が出る

ノートブックでは全組み合わせを一括で比べている。強い相関が21組並び、そのうち12組が体重を統制すると消える

単純r 体重統制後
頭胴長 × 行動圏 +0.668 −0.036
妊娠期間 × 最長寿命 +0.560 +0.069
行動圏 × 出産間隔 +0.533 −0.133

これは統計の失敗ではなく、世界のほうがそうできているということ。だから比較生物学では「体サイズを統制したうえで、まだ残る関係は何か」が本当の問いになる(第10回の回帰・第11回のモデル選択につながる)。

相関が因果でない代表的な理由:

  1. 交絡:第三の変数が両方を動かす(今回の例)
  2. 逆因果:原因と結果が逆かも(「運動するから健康」か「健康だから運動できる」か)
  3. 偶然:たまたま相関しただけ

5. r だけ見るな ―― アンスコムの四重奏

有名な例。4つのまったく違うデータが、どれも r = 0.82、回帰直線もほぼ同じ。でも散布図は別物(直線・曲線・外れ値・1点が支配)。

r という1つの数だけで「関係あり」と報告するのは危険。必ず散布図を見る。

さらに r が測れるのは直線的な関係だけy = x² のようなきれいな放物線でも r ≈ 0 になり、「関係なし」と誤解する。やはりまず散布図


まとめ

注意 中身
相関 ≠ 因果 一緒に動いても原因とは限らない
交絡 隠れた第三の変数が両方を動かす
逆因果 原因と結果が逆かも
偶然 たまたまの相関
r だけ見ない アンスコム・非線形・外れ値 → 必ず散布図

相関を見たら、まず散布図を描き、次に『第三の変数』を疑う。 因果を本当に確かめるには 実験(ランダム化) が要る。 「関係がありそうだ」と感じた瞬間に因果を読み込むのは、第1回の代表性ヒューリスティックと同じ癖である。もっともらしさは、証拠ではない。


今日の課題(Moodle提出)

配点:100点(自動採点40点 + 記述60点)/ 提出先:Moodle

Colab 05_correlation.ipynb を実行したうえで答えること。今回の記述は 「批判的に考える」ことが主役


パートA:選択問題(自動採点・各10点 ×4=40点)

A1. 霊長類データで「体重」と「行動圏」(ともに対数)の相関係数 r に最も近いのは? - (ア) 0.0 (イ) 0.7 (ウ) −0.7 (エ) 1.0

A2. 「離乳日齢」と「行動圏」は r≈0.66 だったが、体重を統制すると相関がほぼ0(0.05)になった。この現象の説明として最も適切なのは? - (ア) 乳離れが遅いことが、広い行動圏を直接もたらしている - (イ) 「体の大きさ」という第三の変数が、離乳日齢と行動圏の両方を動かしていた(交絡) - (ウ) 計算ミス

A3. アンスコムの四重奏が教えることとして最も適切なのは? - (ア) 相関係数 r が同じなら、データの中身も同じ - (イ) r が同じでも、散布図の形はまったく違うことがある。だから必ず図を見る - (ウ) r は常に信用できない

A4.y = x² の放物線データで r ≈ 0 だった」。ここから言える、相関係数の限界は? - (ア) r はデータ数が多いと0になる - (イ) r は直線的な関係しか測れず、曲がった関係は見逃す - (ウ) 放物線には関係がない


パートB:記述問題(AIフィードバック対象・60点)

【全記述に共通・重要】自分の出力を引用すること

記述には、今日のColabで確認した数値を最低1つ引用すること(例:「離乳日齢と行動圏はr=0.657だったが体重統制後は0.051」「体重と行動圏はr=0.68」)。引用がない記述は満点になりません。

B1.(30点) 次の見出しを読んで答えなさい。

朝食を毎日食べる子どもは、食べない子より成績が良い ―― だから朝食を食べさせましょう」

この見出しは「朝食 → 成績」の因果を主張している。今日の授業をふまえ、この主張をそのまま信じてよいかを論じなさい。少なくとも、朝食以外の『対抗仮説(第三の変数)』を1つ挙げ、なぜそれが成績を説明しうるかを書くこと。

B2.(30点) 「相関 ≠ 因果」を、自分の身のまわりの例で1つ作りなさい。

  1. 一緒に増減しそうな2つのこと(相関がありそうな例)
  2. それを「Aが原因でBが起きる」と結論するのが危ういのはなぜか(交絡・逆因果・偶然のどれか)

目安:B1・B2あわせて350〜550字。自分の言葉で書くこと。

次回予告

第6回「確率分布と標本/中心極限定理」。なぜ数百人の調査で全国を語れるのか。一部から全体を推測する、推測統計への入り口。