コンテンツにスキップ

第02回 確率論の基礎(1):条件付き確率

10/6(火)Ⅲ講 13:00〜14:40・B402教室

「情報を得る」とは「確率を更新する」こと。そして今期の主役 「独立性」 を定義する


この回のゴール

  • 条件付き確率 \(P(A\mid B)\) を理解する ―― 情報を得ると確率は更新される
  • 独立 を定義できる:\(P(A\mid B)=P(A)\)(Bを知ってもAの確率が変わらない)
  • 「独立」と「排反」を混同しない
  • 独立が今期(二項分布・正規分布・中心極限定理・区間推定・コンドルセ)の前提であることを知る

到達目標との対応:G1(条件付き確率・ベイズ) の出発点であり、G4(独立性) の定義回。


1. 直感クイズ ―― 2人の子ども問題

ある家庭に子どもが 2人 いる(男女は半々で独立に決まるとする)。 いま 「少なくとも1人は女の子」 だと分かっている。

問い:2人とも女の子である確率は?

直感の多くは「もう1人が女か男か、だから 1/2」と答える。だが正解は 約 1/3 だ。

理由は、もともとの組み合わせが等確率で4通りあること。

上の子 下の子 「少なくとも1人女」を満たすか
✗(消える)
✓(これが「2人とも女」)

「少なくとも1人は女」という情報で (男,男) が消える。残った3通りのうち「2人とも女」は1通り。だから 1/3。情報を得た瞬間、確率が \(1/4 \to 1/3\)更新 された。

Colabで確認

02_conditional.ipynb で10万世帯をシミュレーション → P(2人とも女 | 少なくとも1人女) ≈ 0.333。直感の 0.5 は出てこない。


2. 条件付き確率とは

事象 \(B\) が起きたと分かったうえでの \(A\) の確率を 条件付き確率 と呼び、こう書く。

\[P(A\mid B) = \frac{P(A \cap B)}{P(B)}\]

意味は「\(B\) という条件の世界に絞り込み、その中で \(A\) が占める割合」。Colabのコード 両方女[少なくとも1人女].mean() は、まさに 「条件を満たす世帯だけに絞って、その中の割合を測る」 操作だった。

情報を得る = 標本空間を絞り込む = 確率を更新する。 この考え方は第3回のベイズの定理にそのまま続く。


3. 今期の主役 ―― 「独立」

ここで、統計学Ⅱでもっとも重要な概念を定義する。

事象 \(A\)\(B\)独立 であるとは ―― \(B\) を知っても \(A\) の確率が変わらない こと。

\[P(A\mid B) = P(A) \qquad\Longleftrightarrow\qquad P(A\cap B)=P(A)\,P(B)\]

逆に、\(B\) を知ると \(A\) の確率が変わるなら、2つは 従属(独立でない) という。

\(P(A)\) \(P(A\mid B)\) 判定
独立 コインを2回投げる(A=2投目表, B=1投目表) 0.500 0.500 変わらない → 独立
従属 トランプを戻さず2枚引く(A=2枚目♥, B=1枚目♥) 0.250 0.235 下がる → 従属

「1投目が表でも2投目の確率は変わらない」。一方「1枚目にハートを引くと、山札のハートが減るので2枚目の確率は下がる」。この差が独立かどうかの分かれ目だ。


4. なぜ「独立」が今期の主役なのか

これから学ぶ道具は、ほとんどが 「独立」を前提 にしている。

  • 第4回 二項分布 … 独立なコイン投げを \(n\) 回くりかえす
  • 第5回 正規分布 … 独立な多数の要因の和
  • 第6回 中心極限定理 … 独立な標本の平均
  • 第7回 区間推定 … 独立な標本だから誤差が計算できる

そして第12〜13回で、人々が 「空気を読んで」 互いの判断を真似し始めると、この 独立が壊れ、集団の判断が劣化することを見る。

独立とは

「他に影響されず、自分の情報だけで決まっている」状態。これが壊れると、推測統計の土台そのものが揺らぐ。今日その定義を手に入れた ―― これが第13回「コンドルセの陪審定理」への伏線になる。


5. 注意 ―― 「独立」と「排反」は別物

よくある混同。サイコロで \(A\)=「偶数の目」、\(B\)=「3の目」とする。

  • \(A\)\(B\)排反(同時には起きない。3は偶数ではない)
  • だが 独立ではない\(B\)(3が出た)と分かれば \(A\)(偶数)の確率は \(1/2 \to 0\) に変わる

排反は「重ならない」、独立は「影響しない」。 まったく別の概念。Colabでも P(偶数 | 3が出た) = 0.000 となり、条件で確率が激変する=独立でないことが確認できる。


今日のまとめ

概念 意味
条件付き確率 \(B\) を知った後の \(A\) の確率。情報で更新 \(P(A\mid B)=\dfrac{P(A\cap B)}{P(B)}\)
独立 \(B\) を知っても \(A\) の確率が変わらない \(P(A\mid B)=P(A)\)
排反 \(A\)\(B\) は同時に起きない(≠独立) \(P(A\cap B)=0\)

今日の課題(Moodle提出)

配点:100点(自動採点40点 + 記述60点)/ 提出先:Moodle

第2回のColabノート 02_conditional.ipynb を上から実行し、結果を見たうえで答えること。


パートA:選択問題(自動採点・各10点 ×4=40点)

A1. 子どもが2人いる家庭で「少なくとも1人は女の子」と分かっているとき、「2人とも女の子」である確率に 最も近い のは? - (ア) 約 1/4 - (イ) 約 1/3 - (ウ) 約 1/2

A2. 条件付き確率 \(P(A\mid B)\) の説明として 最も適切 なのは? - (ア) \(A\)\(B\) が同時に起きる確率 - (イ) \(B\) が起きたと分かったうえで、\(A\) が起きる確率 - (ウ) \(A\) が起きたあとで \(B\) が起きる確率

A3. 事象 \(A\)\(B\)独立 であることの定義として正しいのは? - (ア) \(P(A\cap B)=0\)\(A\)\(B\) は同時に起きない) - (イ) \(P(A\mid B)=P(A)\)\(B\) を知っても \(A\) の確率が変わらない) - (ウ) \(P(A)=P(B)\)(2つの確率が等しい)

A4. トランプ52枚(ハート13枚)から、1枚目を戻さずに続けて2枚引く。「2枚目がハート」という事象は、「1枚目がハート」という事象と… - (ア) 独立である(1枚目を知っても2枚目の確率は変わらない) - (イ) 従属である(1枚目がハートだと、2枚目がハートの確率は下がる) - (ウ) 排反である(1枚目がハートなら2枚目はハートになれない)


パートB:記述問題(AIフィードバック対象・60点)

B1.(30点) 2人の子ども問題で「2人とも女の子」の確率が 1/2 ではなく 1/3 になる理由を、4〜6文で説明しなさい。次の2点に必ず触れること。

  1. 情報を得る前は、組み合わせが何通り・それぞれ何の確率だったか
  2. 「少なくとも1人は女」という情報で、何が起きて確率が更新されたか

B2.(30点) あなたの身の回りから、「独立でない(従属な)2つの出来事」 を1つ挙げ、次の2点を書きなさい。

  1. その2つの出来事を \(A\)\(B\) として説明し、なぜ独立でない(一方を知るともう一方の確率が変わる)のかを述べる
  2. もしこの2つを「独立だ」と勘違いして確率を計算すると、どんな間違いが起こりそうか

ヒント:「雨が降る」と「傘を持つ人が増える」、「ある学生が欠席する」と「その友人も欠席する」など。「排反(同時に起きない)」と混同しないこと ―― 独立は「影響しない」、排反は「重ならない」。

文字数の目安:B1・B2あわせて 300〜500字。コピペ・引き写しは評価しない。自分の言葉で書くこと。

次回予告

第3回「ベイズの定理の深掘り」。「精度99%の検査で陽性。本当に病気である確率は?」 ―― 直感は99%、正解は数%。条件付き確率を 逆向き \(P(\text{病気}\mid\text{陽性})\) に使い、データで信念を更新する技術を学ぶ。