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第02回 確率論の基礎(1):条件付き確率

10/6(火)Ⅲ講 13:00〜14:40・B402教室

「情報を得る」とは「確率を更新する」こと。そして今期の主役 「独立性」 を定義する


考え方をガイドで確かめる

この回の考え方は、統計の考え方ガイドの「確率とベイズ」でも解説しています。霊長類のデータを動かしながら確かめられます。

この回のゴール

  • 条件付き確率 \(P(A\mid B)\) を理解する ―― 情報を得ると確率は更新される
  • 独立 を定義できる:\(P(A\mid B)=P(A)\)(\(P(B)>0\))。分母を気にしなくてよい同値な形は \(P(A\cap B)=P(A)P(B)\)
  • 「独立」と「排反」を混同しない
  • この授業が、独立を仮定した基本形(二項分布・正規分布・中心極限定理・区間推定・コンドルセ)から入ることを知る
  • 発展:条件付き確率の定義がなぜこの形になるのかを説明し、独立の2つの表現が同値であることを自分で導ける

到達目標との対応:G1(条件付き確率・ベイズ) の出発点であり、G4(独立性) の定義回。


第1回の復習 ―― ここから今日につながる

今日の話は、第1回(Ⅰの復習とⅡの位置づけ)で立てた見取り図の続きである。要点を3つだけ思い出す。

① 統計学Ⅰでやったこと ―― データを「要約」した

代表値(平均・中央値・最頻値)、ばらつき(標準偏差)、相関。 いずれも 手元にあるデータを短く言い換えるための道具だった。

② 統計学Ⅱで新しく問うこと ―― 「このデータからどこまで言えるか」

要約した数字が、まだ見ていない対象についてどこまで言えるのかを問う。 そのために確率論で武装し、統計的な誤用や「空気を読む」ことの害を見抜けるようにする。

③ 今期を貫く一本の糸は「独立性」

第1回で、この授業のほとんどの回が 独立性 で繋がっていると述べた。 ただし「独立」が効いてくる場所は回ごとに違う。

対象 独立性との関係
二項分布(第4回) 独立で成功確率の等しい試行の成功回数として導くので、独立を仮定している
正規分布(第5回) 分布の形の話であって、独立性とは別
中心極限定理(第6回) 入門で扱う版は独立同分布+有限分散を仮定する。依存を許す版もある
平均・区間推定(第7回) 平均そのものは独立でなくても偏らない。問題はその精度をどう見積もるか

第1回で強調した言い方を、もう一度

「独立でないとお手上げ」ではない。正確には 「独立を仮定した計算を、依存のあるデータにそのまま当てると危ない」である。

コンドルセの陪審定理についても同じだった。あの定理は 「各人が同じ確率 \(p>1/2\) で正答し、その正誤が互いに独立なら」という条件つきの命題で、 \(p<1/2\) なら人数を増やすほど逆に悪くなる。独立が崩れたときに何が起きるかも 依存の仕組みによる(第12〜13回で検討する)。

④ 第1回の課題で、実際に起きた間違い

提出は33名。パートAは30名が全問正解で、誤答3名は全員が A1(平均と中央値のどちらが大きいか)だった。 興味深いのは、この3名とも記述では「平均が中央値の約2倍」「大型類人猿が平均を引っ張る」と正しく説明できていたこと。 中身は分かっていて、選ぶ記号だけが逆になっていた。

記述のパートでは、次の3つが目立った。

起きた間違い 何人 どこが問題か
多数決が成り立つ前提として、「独立」だけを挙げて「正解率が50%を超えること」を落とした 6名 条件は2つあり、片方では足りない
「3条件を満たさないので使えない」で止まり、「何が分かれば判断できるか」を書かなかった 20名 設問が明示的に求めていた
「正解がないので正答率も定義できない」と書いた ― これは正しい検討。満点にした

とくに注意してほしい2つの勘違い

(1) 「同調圧力」を、多数決がうまく働く前提として挙げた答案があった。 これは正反対である。コンドルセの定理が要求するのは「各人の判断が互いに独立であること」で、 同調圧力はその独立性を壊す側の力である。前提そのものを逆向きに覚えてしまっている。

(2) 「各人の意見が同じ方向に傾く(=正答確率が1/2を上回る)」と書いた答案があった。 これは 「同調」と「正答確率」を1つにまとめてしまったものである。 意見がそろうことと、一人ひとりが当てやすいことは、別の量である。 全員が同じ間違いに傾けば、意見はそろっても正答率は下がる。

どちらも「独立という言葉を、まだ日常語のまま使っている」ことから来ている。 第1回では独立を定義せずに名前だけ出したので、無理のない混乱でもある。

今日の定義で、この2つは切り分けられる

今日 \(P(A\mid B)=P(A)\) という式で独立を定義すると、上の2つはこう整理できる。

  • 同調は「他人の判断 \(B\) を知ると自分の判断 \(A\) の確率が変わる」こと、つまり \(P(A\mid B)\neq P(A)\) ―― 従属である
  • 正答確率 \(p\) は、一人の判断が正解と一致する確率そのもの。\(P(A\mid B)\) と \(P(A)\) の関係とは別の話

言葉のままだと混ざるものが、式にすると別の場所に書かれる。それが定義をする理由である。

A1の「向き」の間違いも、今日の話につながる

「平均 > 中央値」か「中央値 > 平均」か ―― これは向きの間違いだった。 今日定義する条件付き確率でも、\(P(A\mid B)\) と \(P(B\mid A)\) という向きが最大の落とし穴になる (第3回では、これが医療検査の読み違いとして現れる)。 内容が分かっていても向きで落とす、というのは統計でくり返し起きる。


だから、今日やること

第1回では「独立性が糸になる」と予告しただけで、独立そのものはまだ定義していない。 今日はそこを埋める。ただし独立の定義には 条件付き確率 が必要になるので、順番はこうなる。

  1. 条件付き確率 \(P(A\mid B)\) を定義する(第2節)
  2. それを使って 独立 を定義する(第3節)
  3. 「独立」と「排反」の区別をつける(第3節)

第1回の表にあった二項分布・正規分布・CLT・区間推定は、すべて今日の定義の上に建っている。


1. 直感クイズ ―― 2人の子ども問題

ある家庭に子どもが 2人 いる(男女は半々で独立に決まるとする)。 いま 「少なくとも1人は女の子」 だと分かっている。

問い:2人とも女の子である確率は?

直感の多くは「もう1人が女か男か、だから 1/2」と答える。だが正解は 1/3 である(下のシミュレーションでは約0.333)。

理由は、もともとの組み合わせが等確率で4通りあること。

上の子 下の子 「少なくとも1人女」を満たすか
男 男 ✗(消える)
男 女 ✓
女 男 ✓
女 女 ✓(これが「2人とも女」)

「少なくとも1人は女」という情報で (男,男) が消える。残った3通りのうち「2人とも女」は1通り。だから 1/3。情報を得た瞬間、確率が \(1/4 \to 1/3\) に 更新 された。

Colabで確認

02_conditional.ipynb で10万世帯をシミュレーション → P(2人とも女 | 少なくとも1人女) ≈ 0.333。直感の 0.5 は出てこない。


2. 条件付き確率とは

事象 \(B\) が起きたと分かったうえでの \(A\) の確率を 条件付き確率 と呼び、こう書く。

\[P(A\mid B) = \frac{P(A \cap B)}{P(B)} \qquad (P(B)>0)\]

式の読み方

まず、声に出して読んでみる。

「ビー のもとでの エー の確率は、エーかつビー の確率を ビー の確率で割ったもの」

記号を1つずつ分解すると、こうなる。

記号 読み 何を指しているか
\(P(\;\cdot\;)\) 「…の確率」
\(A \cap B\) 「\(A\) かつ \(B\)」 \(A\) と \(B\) が両方起きた場合
\(A \mid B\) 「\(B\) のもとでの \(A\)」 縦棒の右が条件、左が知りたいこと
分子 \(P(A\cap B)\) 絞り込んだ舞台の中で、\(A\) も起きている部分
分母 \(P(B)\) 絞り込んだあとの舞台ぜんたい

読む順番のコツ:縦棒を見たら、右から読む。 \(P(A\mid B)\) を左から「エー、ビー」と読むと 向きを取り違えやすい。先に右の \(B\) を見て「舞台は \(B\) に限る」と決め、それから左の \(A\) を読む。 英語では "the probability of \(A\) given \(B\)"(\(B\) が与えられたときの \(A\) の確率)と読み、 この語順のほうが条件が後ろに来る。

よくある読み間違い

読み間違い 実際にはどの式か
「\(A\) と \(B\) の確率」 それは \(P(A\cap B)\)。条件付き確率は割り算が入るので別物
「\(A\) が起きてから \(B\) が起きる確率」 時間の順番ではない。しかも向きが逆
「\(A\) または \(B\) の確率」 それは \(P(A\cup B)\)。\(\cap\) と \(\cup\) は別の記号

書くときの注意:\(P(A\mid B)\) の縦棒は 割り算の記号ではない。\(P(A/B)\) とは書かない。 割り算は式の右辺にあって、縦棒そのものは「条件がついている」という印である。

縦棒の右側は条件であって、先に起きた出来事という意味ではない。 時間の前後とは関係がなく、\(P(B\mid A)\) のように向きを逆にすることもできる(第3回のベイズはまさにこれ)。

意味は「\(B\) という条件の世界に絞り込み、その中で \(A\) が占める割合」。Colabのコード 両方女[少なくとも1人女].mean() は、まさに 「条件を満たす世帯だけに絞って、その中の割合を測る」 操作だった。

情報を得る = 標本空間を絞り込む = 確率を更新する。 この考え方は第3回のベイズの定理にそのまま続く。

導出①:なぜ分母が \(P(B)\) なのか

この定義は天下りに見えるが、やっていることは 割合の測り直し である。

全体を面積 1 の四角形だと思う。\(B\) が起きたと分かった時点で、舞台は \(B\) の内側だけに狭まる。\(B\) の外側は起こらなかったのだから、もう数えない。

狭まった舞台の広さは \(P(B)\)。その中で \(A\) も起きている部分の広さは \(P(A\cap B)\)。だから「新しい舞台の中で \(A\) が占める割合」は

\[P(A\mid B) = \frac{P(A\cap B)}{P(B)}\]

分母が \(P(B)\) なのは、舞台を \(B\) に狭めたぶん、全体がふたたび 1 になるように測り直しているからである。確かめてみると \(P(B\mid B)=P(B)/P(B)=1\) になる。狭めた舞台の中では、\(B\) はもう必ず起きている。

場合の数で言えば「\(B\) を満たす場合だけを分母に数え直す」こと。Colab の 両方女[少なくとも1人女].mean() は、この絞り込みをそのまま実行している。

使った数学:割合の定義と、比の測り直し(算数)。確率の難しい性質は何も使っていない。

導出②:2人の子ども問題を、定義に当てはめて解く

\(A\)=「2人とも女」、\(B\)=「少なくとも1人は女」とおく。男女が半々で独立に決まるので、(上の子, 下の子) の4通りはどれも確率 \(1/4\) である。

  • \(B\) を満たすのは (男,女)、(女,男)、(女,女) の3通り。よって \(P(B)=3/4\)。
  • \(A\) が起きていれば \(B\) も自動的に起きるので \(A\cap B\) は (女,女) の1通りだけ。よって \(P(A\cap B)=1/4\)。

導出①の式に入れる。

\[P(A\mid B) = \frac{P(A\cap B)}{P(B)} = \frac{1/4}{3/4} = \frac{1}{3}\]

直感が \(1/2\) と答えてしまうのは、分母を \(P(B)=3/4\) ではなく「もう1人の性別が2通り」だと思うからである。条件をつけた瞬間に、舞台が4通りから3通りへ変わる。情報が消したのは (男,男) の1通りだけで、残った3通りは等確率のままだから、分母は 2 ではなく 3 になる。

事前は \(P(A)=1/4\)、事後は \(P(A\mid B)=1/3\)。情報を得て確率が更新された。

使った数学:場合の数と分数の割り算(算数)。


3. 今期の主役 ―― 「独立」

ここで、統計学Ⅱでもっとも重要な概念を定義する。

事象 \(A\) と \(B\) が 独立 であるとは ―― \(B\) を知っても \(A\) の確率が変わらない こと。

\[P(A\mid B) = P(A) \qquad\Longleftrightarrow\qquad P(A\cap B)=P(A)\,P(B)\]

逆に、\(B\) を知ると \(A\) の確率が変わるなら、2つは 従属(独立でない) という。

例 \(P(A)\) \(P(A\mid B)\) 判定
独立 コインを2回投げる(A=2投目表, B=1投目表) \(1/2=0.500\) \(1/2=0.500\) 変わらない → 独立
従属 トランプを戻さず2枚引く(A=2枚目♥, B=1枚目♥) \(13/52=0.250\) \(12/51\approx0.235\) 下がる → 従属

「1投目が表でも2投目の確率は変わらない」。一方「1枚目にハートを引くと、山札のハートが減るので2枚目の確率は下がる」。この差が独立かどうかの分かれ目だ。

「2枚目なのに、分母が52なのはなぜ?」

\(P(A)=13/52\) の \(A\) は「2枚目がハート」である。

1枚目が何だったか知らない段階では、よく混ぜた山札の2番目の位置にハートが来る確率は、 1番目の位置と同じく \(13/52\) である。どの位置も対等だからだ。

ところが 1枚目がハートだと分かったなら、残りは51枚でハートは12枚なので \(12/51\approx0.235\)。 情報を得たから分母と分子が切り替わった ―― これが条件付き確率である。

シミュレーションの数字は、理論値とぴたりとは一致しない

Colabで同じことを乱数で確かめると、独立なコインの例でも \(\widehat{P}(A)=0.500350\)、\(\widehat{P}(A\mid B)=0.498873\) のようにわずかにずれる。

これは有限回しか試していないことによるばらつきであって、独立でない証拠ではない。 逆に「近い数字が出たから独立だと証明された」とも言えない。 このシミュレーションは、2回のコイン投げが独立だというモデルのもとで動かしている。 有限回の実測割合が一致するかどうかで、独立性を判定しているのではない。

導出③:独立の2つの表現は、同じことを言っている

独立は2通りに書かれる。この2つが同値であることは、導出①の定義を代入するだけで分かる(以下 \(P(B)>0\) とする)。

左から右へ:\(P(A\mid B)=P(A)\) の両辺に \(P(B)\) を掛ける。左辺は定義より \(P(A\cap B)/P(B)\) だったから、

\[P(A\cap B) = P(A\mid B)\,P(B) = P(A)\,P(B)\]

右から左へ:\(P(A\cap B)=P(A)P(B)\) の両辺を \(P(B)\) で割る。左辺は定義より \(P(A\mid B)\) だから、

\[P(A\mid B) = \frac{P(A)\,P(B)}{P(B)} = P(A)\]

掛けるか割るかの一手で、どちらの向きにも移り合う。新しい仮定は何も足していない。

積の形は対称である

\(P(A\cap B)=P(A)P(B)\) は、\(A\) と \(B\) を入れ替えても同じ式になる。独立は一方通行の関係ではなく、対等な関係である。さらに \(P(A)>0\) なら、逆向きにも \(P(B\mid A)=P(B)\) と書ける(割る相手が \(P(A)\) になるので、こちらが正であることが要る)。\(P(A\mid B)=P(A)\) の形では \(B\) だけが特別な役に見えるが、積の形に直すとその対称性がはっきりする。

この 積の形 が、今期ずっと使われる。第4回の二項分布は「独立だから確率を掛けてよい」で組み立てられ、第6回の標本平均のばらつきも第7回の標準誤差も、もとをたどればこの掛け算から出てくる。第12〜13回で独立が壊れるとき、壊れるのはこの式である。今日のこの1行が、今期の残り全部を支えている。

使った数学:定義の代入と、両辺への掛け算・割り算(算数)。


3.5 もうひとつ計算してみる ―― \(A\) と \(B\) が重なりきらない例

子ども問題は \(A\)(2人とも女)が起きれば必ず \(B\)(少なくとも1人女)も起きるので、\(P(A\cap B)=P(A)\) になっていた。 いつもそうなるわけではない。\(A\) だけ・\(B\) だけ・両方、の3通りがある例で確かめる。

学生100人を調べたところ、アルバイトをしている人が30人、一人暮らしの人が20人、 その両方に当てはまる人が12人だった。この100人から1人を等確率で選ぶ。 \(A\)=「アルバイトをしている」、\(B\)=「一人暮らしである」とする。

\[P(A)=\frac{30}{100}=0.30,\qquad P(B)=\frac{20}{100}=0.20,\qquad P(A\cap B)=\frac{12}{100}=0.12\]
\[P(A\mid B)=\frac{P(A\cap B)}{P(B)}=\frac{12/100}{20/100}=\frac{12}{20}=0.60\]

分母が100人から20人に切り替わり、分子が30人から12人に切り替わった。これが「条件の世界に絞り込む」ということである。

向きを逆にすると値が変わることも確かめておく。

\[P(B\mid A)=\frac{12/100}{30/100}=\frac{12}{30}=0.40\]

\(P(A\mid B)=0.60\) と \(P(B\mid A)=0.40\) は別の量である。縦棒のどちら側が条件かで答えが変わる。

そして \(P(A)=0.30\) に対して \(P(A\mid B)=0.60\) なので、この100人の中では \(A\) と \(B\) は独立ではない。 (積の形でも確かめられる:\(P(A)P(B)=0.30\times0.20=0.06 \neq 0.12=P(A\cap B)\))


4. なぜ「独立」が今期の主役なのか

この授業で扱う道具は、独立を仮定した基本形から入る。

  • 第4回 二項分布 … 独立な試行を \(n\) 回くりかえす
  • 第5回 正規分布 … 独立な多数の要因が足し合わさる場合の近似
  • 第6回 中心極限定理 … 独立な標本の平均
  • 第7回 区間推定 … 独立な標本を仮定して誤差の幅を計算する

そして第12〜13回で、人々が 「空気を読んで」 互いの判断を真似し始めると、この 独立の仮定が成り立たなくなり、 独立を前提に導いた多数決の保証がそのままでは使えなくなることを見る。

「独立でなければ統計が使えない」ではない

独立は便利な仮定であって、統計の必要条件ではない。 依存関係がある場合でも、その依存をモデルに組み込めば推定はできる(時系列、階層モデル、クラスター標本など)。

この授業が独立から始めるのは、式がいちばん簡単になるからである。 気をつけるべきなのは、独立でないデータに、独立を仮定した公式をそのまま当てはめることのほうだ。

なお、正規分布に従うことと複数の観測が独立であることは別の話である。 正規分布は1つの変数の分布の形、独立は複数の変数の関係であって、どちらか一方だけが成り立つこともある。

独立とは

一方が起きたと知っても、もう一方の確率が変わらないという、確率どうしの関係である。

「互いに影響し合わない」という因果の話ではない。 たとえば2人の学生が連絡を取り合っていなくても、同じ路線の運休で2人とも欠席するなら、 「Aが欠席した」と知ることで「Bも欠席している」確率は上がる。\(A\) と \(B\) の間に直接の因果関係がなくても、共通の原因によって従属になることがある。

今日その定義を手に入れた ―― これが第13回「コンドルセの陪審定理」への伏線になる。


5. 注意 ―― 「独立」と「排反」は別物

よくある混同。サイコロで \(A\)=「偶数の目」、\(B\)=「3の目」とする。

  • \(A\) と \(B\) は 排反(同時には起きない。3は偶数ではない)
  • だが 独立ではない:\(B\)(3が出た)と分かれば \(A\)(偶数)の確率は \(1/2 \to 0\) に変わる

排反は「重ならない」、独立は「知っても確率が変わらない」。 まったく別の概念。Colabでも P(偶数 | 3が出た) = 0.000 となり、条件で確率が激変する=独立でないことが確認できる。


今日のまとめ

概念 意味 式
条件付き確率 \(B\) を知った後の \(A\) の確率。情報で更新 \(P(A\mid B)=\dfrac{P(A\cap B)}{P(B)}\)
独立 \(B\) を知っても \(A\) の確率が変わらない \(P(A\mid B)=P(A)\)
排反 \(A\) と \(B\) は同時に起きない(≠独立) \(P(A\cap B)=0\)

今日の課題(Moodle提出)

配点:100点(選択40点 + 記述60点)/ 提出先:Moodle / 提出期限:次回授業の開始時刻まで

第2回のColabノート 02_conditional.ipynb を上から実行し、結果を見たうえで答えること。


パートA:選択問題(各10点 ×4=40点)

A1. 学生100人のうち、アルバイトをしている人が30人、一人暮らしの人が20人、その両方に当てはまる人が12人だった。この100人から1人を等確率で選ぶ。\(A\)=「アルバイトをしている」、\(B\)=「一人暮らしである」とするとき、\(P(A\mid B)\) はいくつか。

  • (ア) 0.12
  • (イ) 0.60
  • (ウ) 0.40

A2. 条件付き確率 \(P(A\mid B)\) の説明として 最も適切 なのは?

  • (ア) \(A\) と \(B\) が同時に起きる確率
  • (イ) \(B\) が起きたと分かったうえで、\(A\) が起きる確率
  • (ウ) \(A\) が起きたと分かったうえで、\(B\) が起きる確率

A3. 事象 \(A\) と \(B\) が 独立 であることの定義として正しいのは?(ただし \(P(B)>0\) とする)

  • (ア) \(P(A\cap B)=0\)(\(A\) と \(B\) は同時に起きない)
  • (イ) \(P(A\mid B)=P(A)\)(\(B\) を知っても \(A\) の確率が変わらない)
  • (ウ) \(P(A)=P(B)\)(2つの確率が等しい)

A4. トランプ52枚(ハート13枚)から、1枚目を戻さずに続けて2枚引く。「2枚目がハート」という事象は、「1枚目がハート」という事象と…

  • (ア) 独立である(1枚目を知っても2枚目の確率は変わらない)
  • (イ) 従属である(1枚目がハートだと、2枚目がハートの確率は下がる)
  • (ウ) 排反である(1枚目がハートなら2枚目はハートになれない)

パートB:記述問題(AIフィードバック対象・60点)

B1.(30点) 2人の子ども問題で「2人とも女の子」の確率が 1/2 ではなく 1/3 になる理由を、150〜250字程度で説明しなさい。次の2点に必ず触れること。

  1. 情報を得る前は、組み合わせが何通り・それぞれ何の確率だったか
  2. 「少なくとも1人は女」という情報で、何が起きて確率が更新されたか

B2.(30点) あなたの身の回りから、「独立でない(従属な)2つの出来事」 を1つ挙げ、次の2点を書きなさい。

  1. その2つの出来事を \(A\)・\(B\) として説明し、なぜ独立でない(一方を知るともう一方の確率が変わる)のかを述べる
  2. もしこの2つを「独立だ」と勘違いして確率を計算すると、どんな間違いが起こりそうか

ヒント:「今日は雨が降る」と「ある人が傘を持って出かける」、「ある学生が欠席する」と「その友人も欠席する」など。\(A\)・\(B\) はどちらも「起きたか起きなかったか」が決まる出来事(事象)にすること。「傘を持つ人が増える」のような集団の傾向は事象ではないので、\(A\)・\(B\) に置くと「\(P(A\mid B)\) と \(P(A)\) を比べる」という話ができなくなります。「排反(同時に起きない)」と混同しないこと ―― 独立は「知っても確率が変わらない」、排反は「重ならない」。 なお、排反な2つの出来事を挙げて「従属である」と説明するのは正しい(確率が正なら、排反な事象は独立になりえない)。同時に起こりうる例のほうが説明しやすいが、どちらでも構わない。

文字数の目安:B1・B2あわせて 300〜500字。コピペ・引き写しは評価しない。自分の言葉で書くこと。

字数は目安です。多少の過不足で減点はしません。見るのは、設問が挙げた要素(上の箇条書き)が書けているかどうかです。ただし要素が抜けていれば、その分は引きます。

次回予告

第3回「ベイズの定理の深掘り」。「精度99%の検査で陽性。本当に病気である確率は?」 ―― 直感は99%だが、それは決まらない。検査性能の定義と、その集団でのもともとの病気の割合が分からないと答えが出ない。割合が低ければ数%にもなる。条件付き確率を 逆向き \(P(\text{病気}\mid\text{陽性})\) に使い、データで信念を更新する技術を学ぶ。