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第04回 離散確率分布:二項分布・ポアソン分布

10/20(火)Ⅲ講 13:00〜14:40・B402教室

「独立な試行」を数式にする


この回のゴール

  • 確率変数・期待値・分散を理解する
  • 二項分布:独立な試行 \(n\) 回中の成功回数の分布
  • ポアソン分布:稀な事象の件数の分布、二項→ポアソン近似
  • 両者の 共通の前提が「独立」 であり、独立が崩れると分布が壊れることを知る

到達目標との対応:G1(確率の理解)G4(独立性)


1. 直感クイズ ―― 10回投げて7回表。イカサマ?

公正なコイン(表の確率0.5)を10回投げたら表が 7回 出た。

問い:これは「イカサマだ」と言えるほど珍しいか?

二項分布で計算すると、7回以上が出る確率は約17%。5〜6回に1回は起きる、ありふれた偶然だ。これだけではイカサマとは言えない。

後の伏線

「珍しさ」を確率で測るこの発想は、第8〜9回の 仮説検定・p値 につながる。「珍しい=偶然では説明しにくい」をどこで線引きするかが、後の大問題になる。


2. 二項分布 ―― 独立な試行を n 回

確率変数:偶然で値が決まる量(ここでは「10回中の表の回数」)。

成功確率 \(p\) の試行を 独立に \(n\) 回くりかえし、成功回数を数えると 二項分布 \(\mathrm{Binom}(n,p)\) になる。

\[P(X=k) = \binom{n}{k}\,p^{k}(1-p)^{n-k}, \qquad E[X]=np,\quad V[X]=np(1-p)\]

Colabで1万セットのコイン投げをシミュレーションすると、ヒストグラムが理論の二項分布にぴったり重なり、平均 \(\approx 5\)・分散 \(\approx 2.5\) が再現される。

大前提は『独立』

二項分布は 各試行が独立 であることを前提にしている。1回目の結果が2回目に影響しないからこそ、確率を単純にかけ算できる。この前提が崩れると二項分布は使えない(→第4節)。


3. ポアソン分布 ―― 稀な事象の件数

「1日の迷惑電話の件数」「1ページの誤植の数」「1時間の来客数」―― 機会は膨大で、それぞれの確率は小さい 事象の件数は ポアソン分布 \(\mathrm{Poisson}(\lambda)\) になる。

\[P(X=k)=\frac{\lambda^{k}e^{-\lambda}}{k!},\qquad E[X]=V[X]=\lambda\]

\(\lambda\) は「平均して何件起きるか」。二項分布で \(n\) が大きく \(p\) が小さいとき(\(\lambda=np\) 一定)、二項分布はポアソン分布に近づく。Colabで \(n=10,50,500\) と大きくすると、二項分布がポアソン分布に重なっていくのが見える。

二項分布 ポアソン分布
使う場面 試行回数 \(n\) が決まっている(10回投げる) 機会が膨大で件数だけ分かる(1日の件数)
パラメータ \(n,\ p\) \(\lambda\)(平均件数)
共通の前提 各試行が独立 各事象が独立

4. もし試行が「独立でなかったら」?

二項分布もポアソン分布も、前提は 各試行が独立。では独立が崩れたら?

10人が順番に答えるクイズで、各人が 8割の確率で前の人の答えを真似る(空気を読む)とする。一人ひとりはコインで決めるつもりでも、互いに影響し合っている。Colabで「10人中の正解者数」の分布を見ると:

平均 分散 極端な結果(全員一致)の割合
独立に判断 約5.0 約2.5 0.2%
8割で真似る 約5.0 約13.5 38%

平均は同じ。だが分散は約5倍に膨らみ、0人や10人といった極端な結果が激増する。 みんなが同じ方向に流れるからだ。

今期の背骨

独立が崩れると、二項分布という前提が成り立たない。「平均は同じ」でも「ばらつきは激増」する。この『真似ると極端な結果が増える』現象こそ、第12回 情報カスケード・第13回 コンドルセの陪審定理 で集団の判断を狂わせる正体だ。今日その種を見た。


今日のまとめ

分布 何の分布か 前提
二項分布 独立な試行 \(n\) 回中の成功回数 \(\binom{n}{k}p^k(1-p)^{n-k}\) 各試行が独立
ポアソン分布 稀な事象の件数 \(\dfrac{\lambda^k e^{-\lambda}}{k!}\) 各事象が独立

今日の課題(Moodle提出)

配点:100点(自動採点40点 + 記述60点)/ 提出先:Moodle

第4回のColabノート 04_discrete.ipynb を上から実行し、結果を見たうえで答えること。


パートA:選択問題(自動採点・各10点 ×4=40点)

A1. 公正なコイン(p=0.5)を10回投げて、表が 7回以上 出る確率に 最も近い のは? - (ア) 約 2% (イ) 約 17% (ウ) 約 50%

A2. 二項分布 \(\mathrm{Binom}(n,p)\) の期待値(平均)と分散の組として正しいのは? - (ア) 平均 \(np\)、分散 \(np(1-p)\) - (イ) 平均 \(p\)、分散 \(np\) - (ウ) 平均 \(np\)、分散 \(\lambda\)

A3. 次のうち、ポアソン分布 でモデル化するのが最も自然なのはどれか? - (ア) サイコロを20回振って6が出る回数 - (イ) ある書店に1時間あたりに来店する客の人数 - (ウ) 10人の学生のうち、特定の1人が選ばれるかどうか

A4. Colabで「10人が8割の確率で前の人の答えを真似る(独立でない)」場合、独立なときと比べて起きたことは? - (ア) 平均も分散もほとんど変わらない - (イ) 平均はほぼ同じだが、分散が大きく増え、全員一致のような極端な結果が増えた - (ウ) 平均が大きく下がった


パートB:記述問題(AIフィードバック対象・60点)

B1.(30点) 二項分布とポアソン分布について、①それぞれどんな場面で使うか ②両者に共通する前提は何か を、具体例を1つずつ挙げながら4〜6文で説明しなさい。

B2.(30点) Colabの最後で、「各人が前の人を真似る(独立でない)」と、10人中の正解者数の 分散が大きく膨らみ、全員一致のような極端な結果が増える ことを見た。これを踏まえて次の2点を書きなさい。

  1. なぜ「真似る(独立が崩れる)」と、平均は同じなのに極端な結果が増えるのか、自分の言葉で説明する
  2. もし現実に「みんなが独立に判断していると思い込んで」二項分布で予測したら、実際の集団(真似合う集団)に対してどんな読み違いをするか

ヒント:B2は第12〜13回(情報カスケード・コンドルセの陪審定理)の予告になっている。「みんなが同じ方向に流れる」とき何が起きるか、を意識して書くとよい。

文字数の目安:B1・B2あわせて 300〜500字。コピペ・引き写しは評価しない。自分の言葉で書くこと。

次回予告

第5回「連続確率分布:正規分布の数理」。なぜ世界は正規分布だらけなのか ―― 答えはまた 独立 にある(多数の独立な要因の和)。そして「すべてが正規」ではないことも見る。