第7回 先行研究の調査¶
11/17(火)Ⅴ講 16:40〜18:20・A301教室
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この回の問い¶
自分が考えたその問いは、すでに誰かが答えているのではないか。
到達目標¶
- 先行研究を調べることの意義を説明できる
- 学術論文・学術書・報告書・新聞記事の違いを理解する
- CiNii Research・J-STAGE を実際に操作できる
- Google Scholar・JSTOR など海外ツールの特徴を把握する
- 文献の信頼性(査読有無・インパクトファクター)を評価できる
- Zotero 等の文献管理ツールの使い方を知る
要点¶
なぜ先行研究を調べるのか¶
理由は3つある。車輪の再発明を防ぐこと、自分の問いを理論的文脈のなかに位置づけること、そして先人の方法を借りることである。調査を思いついた時点で探すのではなく、問いを立てる段階から並行して探すのが実際的である。
文献の種類と信頼性¶
| 種類 | 特徴 | 信頼性の目安 |
|---|---|---|
| 学術論文 | 査読あり・専門誌掲載 | 高(査読有)〜中(査読無) |
| 学術書(単著・編著) | 出版社の審査あり | 中〜高 |
| 研究報告書 | 機関・科研費等の成果報告 | 中(査読なしが多い) |
| 白書・行政資料 | 公的機関発行 | 高(一次資料として) |
| 新聞記事 | 事実確認・時事情報 | 中(一次資料としては低い) |
| ウェブページ | 多様 | 要精査(→ 第8回) |
原則:レポート・卒論では「査読付き学術論文」か「学術書」を主な根拠にする。
国内の検索ツール¶
CiNii Research — https://cir.nii.ac.jp/ 論文・図書・博士論文・研究データを横断検索できる。まず広く探すならここ。
J-STAGE — https://www.jstage.jst.go.jp/ 科学技術振興機構(JST)が運営するオープンアクセスのプラットフォーム。登録誌はすべて無料で全文が読める。社会学・教育学・心理学・公衆衛生学など人文社会科学系も充実している。
NDL Digital Collections — 国立国会図書館のデジタル化資料。古い資料に強い。
| 使いどころ | |
|---|---|
| J-STAGE | 確実に無料で全文が読める論文を探したい |
| CiNii | 図書・博士論文も含めて広く探したい/図書館経由の入手も視野に入れる |
海外の検索ツール¶
Google Scholar — https://scholar.google.com/ 世界中の学術文献を横断検索できて無料。「被引用数」から芋づる式に文献をたどれるのが最大の利点。ただし査読なし論文やプレプリントも混在するので、信頼性は自分で判断する必要がある。入口として使うのがよい。
JSTOR — https://www.jstor.org/ 人文・社会科学を中心とした学術誌のバックナンバー・アーカイブ。社会学・政治学・歴史学・文化人類学の古典的論文に強い。無料アカウントで月3本まで閲覧可能。大学の機関アカウントがあれば無制限(北星学園大学の契約状況は要確認)。
そのほか Scopus / Web of Science(引用情報の精度が高い・図書館経由)、PubMed(医学・公衆衛生に特化・無料)。
手に入らないときは ILL¶
ILL(Inter Library Loan/図書館間相互貸借) は、自館にない図書・論文を他大学から取り寄せるサービスである。
- OPAC で自館にないことを確認する
- 図書館窓口またはオンラインで ILL を申請する
- 論文複写なら1〜2週間程度(実費がかかる場合あり)/図書の現物貸借なら2〜4週間程度
「図書館にないから諦める」のではなく、取り寄せるという発想を持つこと。
信頼性の評価と文献管理¶
査読(peer review) とは、投稿された論文を専門家2〜3名が匿名で審査する仕組みである。学会誌・専門誌(「◯◯学会誌」「Journal of ◯◯」)に載っているかどうかが目安になる。
インパクトファクター(IF) は学術誌の影響力を被引用数から測る指標だが、人文社会科学系は理系より全般に低い傾向があり、分野をまたいだ比較には使えない。IFが低い誌の論文でも、内容が優れていれば価値がある。
文献管理は早めに始めるのが得である。Zotero(無料・オープンソース・日本語対応)はブラウザ拡張で論文情報を1クリック保存でき、Word と連携して参考文献リストを自動生成できる。
今日の課題(Moodle提出)¶
提出期限:次回授業の開始前まで
分量:300〜500字
CiNii Research(または J-STAGE)を使って、自分が関心を持つテーマに関連する学術論文を1本検索し、以下をレポートにまとめること。
- 書誌情報の記録:著者名・発表年・論文タイトル・掲載誌名・巻号・ページ数を正確に書く
- 要旨の要約:何を問い、どのような方法で、どのような結論を得たかを 100〜150字で自分の言葉で説明する
- 検索プロセスの記録:使用したキーワード・絞り込みの方法・その論文を選んだ理由
- 感想・気づき:読んで感じたこと、自分の問いとの関連性
検索に使用したデータベース名(CiNii Research / J-STAGE 等)と検索日を必ず明記すること。
この回のまとめ¶
- 先行研究調査は「車輪の再発明を防ぐ」「理論的文脈を確認する」ための必須作業
- 国内ツール:CiNii Research(広域検索)・J-STAGE(全文無料)・NDL Digital
- 海外ツール:Google Scholar(入口として便利)・JSTOR(人文社会科学バックナンバー)
- 大学図書館の ILL を積極的に活用する
- 査読の有無・インパクトファクターで文献の信頼性を評価する
- Zotero などの文献管理ツールで早めに文献整理を始める習慣をつける
次回予告
第8回「資料・文献調査」。行政資料の探し方と、ネット情報の信頼性の見きわめ方。
参考文献¶
先行研究の調査(図書館・論文検索サイトの活用)¶
入門書・教科書¶
大串夏身(2010)『学術情報サービスの展開:大学図書館における情報リテラシー教育の実践』青弓社。
大学図書館の情報サービスと情報リテラシー教育を実践的に解説。CiNii 等の国内データベースの活用法や ILL の手順が具体的に説明されており、図書館活用の基礎として最適。
倉田敬子(2012)『学術情報流通とオープンアクセス』勁草書房。
学術情報の生産・流通・利用のしくみを体系的に解説した専門書。査読システム・インパクトファクター・オープンアクセス運動の背景を理解するのに役立つ。大学院進学を考える学生にも推奨。
辻正二・岩永雅也 編著(2002)『社会調査の基礎』放送大学教育振興会。
社会調査の教科書として広く使われてきた標準テキスト。先行研究のレビュー方法と研究設計の関係について明快に解説している章が特に有用。
土屋俊(2004)『大学図書館経営論』東京大学出版会。
大学図書館の機能・資料収集・情報サービスを体系的に論じた専門書。上級者向けだが、大学図書館が研究の基盤として果たす役割を深く理解したい学生に推奨。
当該回テーマに関連する文献¶
佐藤郁哉(2008)『質的データ分析法:原理・方法・実践』新曜社。
質的調査の研究デザインにおいて先行研究のレビューがどのような位置を占めるかを詳しく論じている。第2章「研究のためのリテラシー」が先行研究調査の実践に直結する内容。
野口裕二(2018)『ナラティヴと共同性:自助グループ・当事者研究・オープンダイアローグ』青土社。
先行研究の批判的参照のしかたのモデルとして参考になる著作。単なる文献紹介ではなく、先行研究との対話を通じて自らの問いを鍛える姿勢を学べる。
APA(American Psychological Association)著・前田樹海・江藤裕之・田中建彦 訳(2011)『APA 論文作成マニュアル 第2版』医学書院。
社会科学系で広く採用されている APA スタイルの公式マニュアル日本語版。参考文献リストの書き方・文献引用の形式が網羅されており、レポート・卒論の必携書。
ウェブリソース¶
CiNii Research(国立情報学研究所) https://cir.nii.ac.jp/
国内最大規模の学術情報データベース。論文・図書・博士論文・研究データを横断検索できる。利用方法の公式チュートリアル動画も NII の YouTube チャンネルで公開されている。
J-STAGE(科学技術振興機構) https://www.jstage.jst.go.jp/
JST が運営するオープンアクセス電子ジャーナルプラットフォーム。登録誌の論文はすべて無料で全文閲覧可能。社会学・教育学・心理学系の誌も多数収録。
国立国会図書館デジタルコレクション https://dl.ndl.go.jp/
国立国会図書館所蔵資料のデジタル化版。古い資料・雑誌・行政資料の閲覧に有用。「図書館送信サービス」を通じた資料閲覧は参加機関(大学図書館等)でのログインが必要。
Zotero(文献管理ツール) https://www.zotero.org/
無料オープンソースの文献管理ソフト。Windows・Mac・Linux・iOS・Android に対応。ブラウザ拡張機能(Zotero Connector)で CiNii・J-STAGE 等から書誌情報を1クリックで保存可能。
Google Scholar https://scholar.google.com/
Google が提供する学術文献横断検索エンジン。英語文献を中心に国内外の論文・書籍・報告書を幅広く検索できる。信頼性の判断は利用者に委ねられるため、補助ツールとして位置づける。
北星学園大学図書館(OPAC・ILL 申請) https://www.hokusei.ac.jp/library/
北星学園大学図書館の公式サイト。OPAC による蔵書検索・ILL(図書館間相互貸借)の申請・データベース一覧等が利用できる。学外からも利用可能なデータベースサービスへのリンクも掲載。
次回事前読書案(任意)¶
第08回「資料・文献調査(行政資料、インターネット検索)」に向けて
総務省統計局(随時更新)「統計データの探し方・使い方」e-Stat ポータルサイト内ガイド。 https://www.e-stat.go.jp/
政府統計の総合窓口。第08回で扱う行政統計の入手方法を事前に体験しておくと理解が深まる。「統計ダッシュボード」でビジュアル的に統計データを確認することもできる。
山田剛史・林創(2011)『大学生のためのリサーチリテラシー入門:研究のための8つの力』ミネルヴァ書房。
情報探索・文献収集・信頼性評価・引用方法を総合的に解説した学部生向けテキスト。第07回・第08回の内容をあわせて復習するのに適している。