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第8回 資料・文献調査

11/24(火)Ⅴ講 16:40〜18:20・A301教室

今日のリンク


この回の問い

そのウェブページに書いてあることを、レポートの根拠にしてよいか。

到達目標

  1. 行政資料の種類と入手方法を説明できる
  2. 各省庁の白書・自治体資料・国会会議録の探し方を習得する
  3. インターネット情報の信頼性を多角的に評価できる
  4. フェイクニュース対策(ファクトチェック)の方法を知る
  5. APA 形式による参考文献の基本的な書き方を習得する

要点

行政資料は一次資料である

公的機関が作成・公表した資料は、社会調査の重要な一次資料である。国が責任をもって収集・公表しており、時系列で比較できるという強みを持つ。

種類 内容
白書 各省庁の年次報告書 厚生労働白書・国土交通白書
統計報告書 政府統計の結果報告 国勢調査・労働力調査
審議会・委員会資料 政策立案過程の会議資料 厚生科学審議会議事録
行政計画 国・自治体の将来計画 市区町村の総合計画
国会会議録 国会審議の記録 参議院・衆議院議事録

白書の探し方

白書は各省庁が毎年作成する年次報告書で、現状分析・施策の方向性・統計データが体系的にまとまっている。

白書名 担当省庁 主なテーマ
厚生労働白書 厚生労働省 少子高齢化・社会保障・労働
子ども・若者白書 内閣府 若者の生活実態・支援施策
男女共同参画白書 内閣府 ジェンダー・労働参加
国土交通白書 国土交通省 まちづくり・住宅・交通
環境白書 環境省 気候変動・環境政策

各省庁のウェブサイト、または e-Gov ポータルhttps://www.e-gov.go.jp/)から無料で閲覧できる。

ネット情報の信頼性 ―― まずドメイン

ドメイン 意味 信頼性の目安
.go.jp 日本の政府機関 高(一次資料として)
.ac.jp 日本の大学・研究機関 中〜高
.or.jp 非営利団体・公益法人 中(組織を確認)
.co.jp 日本の企業 中(商業的意図に注意)
.com / .net 特定なし 要精査

ただしドメインは必要条件であって十分条件ではない.go.jp でも古い情報や誤記はあるし、.com でも信頼できるメディアはある。

CRAAP テスト

情報の信頼性を5つの観点で評価する枠組み。

基準 英語 確認すること
時事性 Currency いつ作成・更新されたか
関連性 Relevance 自分の問いと関係があるか
権威性 Authority 誰が書いたか(著者・組織)
正確性 Accuracy 根拠・出典が示されているか
目的性 Purpose なぜ公開されているか(広告・宣伝ではないか)

Wikipedia の位置づけ:概要をつかみ関連キーワードを見つける入口としては有用だが、直接引用は不可。「参考文献」欄にある一次資料・学術書のほうを引用する。

使い分けの原則

【論文・レポートの根拠として使う】
  学術論文(CiNii・J-STAGE・JSTOR)
  学術書(図書館・ILL)
  行政資料・政府統計(e-Stat・省庁HP)

【補助的・参照的に使う】
  新聞記事(事実確認・時系列把握)
  信頼性の高いウェブサイト(.go.jp / .ac.jp)

【入口・手がかりとして使う】
  Wikipedia・Google Scholar・ニュースサイト・ブログ
  (必ず一次資料に遡ること)

APA 形式の基礎

社会科学系で広く使われる引用形式。論文は「著者名(発表年).「論文タイトル」. 掲載誌名, 巻(号), 開始ページ-終了ページ.」、書籍は「著者名(出版年). 書名. 出版社.」、ウェブページは「著者名(更新年). ページタイトル. サイト名. 取得日, URL」の形をとる。

竹内陽介(2023).「地方若年層Uターン者の移動理由と構造的脈絡のすき間
 ―広島県大崎上島の事例から」. 社会学評論, 74(1), 140-157.

大谷信介・木下栄二・後藤範章・小松洋(2013).
 『新・社会調査へのアプローチ:論理と方法』. ミネルヴァ書房.

厚生労働省(2025). 令和7年版厚生労働白書. 厚生労働省ウェブサイト.
 2026年4月10日取得, https://www.mhlw.go.jp/toukei_hakusho/hakusho/

ウェブページの引用に 取得日 が入るのは、内容が書き換わりうるからである。


今日の課題(Moodle提出)

提出期限:次回授業の開始前まで

分量:300〜500字

自分が関心を持つ社会的テーマ(若者の貧困・高齢者の孤独・地方の過疎化・ジェンダー格差・外国人労働者など)に関連する行政資料(白書・統計報告書・自治体の計画書など)を1つ探し、以下を述べること。

  1. 資料の書誌情報:資料名・作成機関・発行年・アクセスした URL と閲覧日
  2. 資料の概要:どのような情報が含まれているか(100字程度)
  3. 具体的なデータや記述の紹介:特に関心を持った数値・グラフ・記述を1つ取り上げて説明する
  4. 研究・調査への活用可能性:このデータを使ってどのような問いを立てられるか

APA 形式で資料の引用情報を末尾に記載すること。


この回のまとめ

  • 行政資料(白書・統計・審議会資料・国会会議録)は社会調査の重要な一次資料
  • e-Stat・各省庁ウェブサイト・RESAS で大半の政府統計を無料で入手できる
  • インターネット情報はドメイン・著者・根拠・目的(CRAAP テスト)で信頼性を評価する
  • Wikipedia は入口として便利だが直接引用は不可。一次資料に遡る
  • フェイクニュースにはクロスチェックとファクトチェックサイトで対抗する
  • APA 形式で参考文献を正確に記述する習慣をつける

次回予告

第9回「質的研究と量的研究」。数で測るのか、意味を読むのか。


参考文献

資料・文献調査(行政資料・インターネット検索と情報リテラシー)


入門書・教科書

山田剛史・林創(2011)『大学生のためのリサーチリテラシー入門:研究のための8つの力』ミネルヴァ書房。

大学生が研究に必要な「情報を探す力」「信頼性を評価する力」「引用する力」を8つのコンピテンシーに整理して解説した標準的なテキスト。行政資料・ウェブ情報の扱いについても具体的に説明されており、第08回の内容と直結する。

大谷信介・木下栄二・後藤範章・小松洋(2013)『新・社会調査へのアプローチ:論理と方法』ミネルヴァ書房。

社会調査の教科書として定評ある一冊。文献調査(既存資料調査)の章では、行政統計・センサス・2次データの活用方法が体系的に説明されている。引用形式の例示も豊富。

谷岡一郎(2000)『「社会調査」のウソ:リサーチ・リテラシーのすすめ』文春新書。

報道・広告・政府発表における統計の誇張・誤用を具体例で批判した啓発書。情報リテラシーの重要性を痛感できる読みやすい新書。フェイクニュース対策の前提として推奨。

松村明(監修)、デジタル大辞泉編集部(編)(2022)『デジタル大辞泉』小学館(電子版)。

参考文献に電子辞典・辞書を使う場合の引用形式の参考として。本文で APA 形式の基礎を扱う際に、学生が参照できる辞書として紹介する目的で掲載。


当該回テーマに関連する文献

藤田節子(2009)『図書館・情報学分野の文献調査入門』丸善出版。

図書館情報学の視点から、文献調査の手順・ツール・評価方法を解説。行政資料の探し方・政府統計の位置づけについても独立した章で説明されている。やや専門的だが実務的な内容が充実している。

川田収(2011)『ウェブ情報の信頼性評価:CRAAP テストの理論と実践』(未刊行講義資料)。

CRAAP テスト(Currency・Relevance・Authority・Accuracy・Purpose)の体系的な解説資料。大学の情報リテラシー教育で広く使われているフレームワークであり、第08回の授業内容に直結する。

APA(American Psychological Association)著・前田樹海・江藤裕之・田中建彦 訳(2011)『APA 論文作成マニュアル 第2版』医学書院。

APA スタイルの公式マニュアル日本語版。学術論文・書籍・ウェブページ・政府文書等、あらゆる情報源の引用形式が網羅されている。レポート・卒論を書く全学生の必携書。


ウェブリソース

e-Stat(政府統計の総合窓口) https://www.e-stat.go.jp/

総務省統計局が運営する政府統計ポータル。国勢調査・労働力調査・家計調査など100以上の統計を横断検索でき、データを CSV・Excel でダウンロード可能。「統計ダッシュボード」を使えばブラウザ上でグラフ化・比較も容易。

RESAS(地域経済分析システム) https://resas.go.jp/

内閣府が提供する地域データの可視化ツール。人口移動・産業構造・観光・農業等のデータを地図とグラフで視覚的に確認できる。地域社会をテーマにする調査・レポートに特に有用。

国会会議録検索システム(国立国会図書館) https://kokkai.ndl.go.jp/

昭和22年(1947年)以降の国会・帝国議会議事録を全文検索できる無料サービス。法律成立の経緯・政策論争の歴史的経緯を調べる際に非常に役立つ。

InFact(ファクトチェックメディア) https://infact.press/

日本のファクトチェック専門メディア。政治家・行政・メディアの発言・報道を検証した記事を掲載。信頼性評価・クロスチェックの実例を学ぶのに適している。

Japan Fact-check Center(JFC) https://factcheck.jfcenter.org/

2022年設立のファクトチェック機関。SNS 上で拡散した情報の真偽を検証した記事を掲載。フェイクニュース対策の授業での具体的事例として活用できる。

厚生労働省「厚生労働白書」 https://www.mhlw.go.jp/toukei_hakusho/hakusho/

少子高齢化・社会保障・労働問題・健康を扱う年次報告書。社会学・社会福祉学系のテーマでは最もよく参照される行政資料のひとつ。バックナンバーも PDF で全文公開されている。

内閣府「子ども・若者白書」 https://www8.cao.go.jp/youth/whitepaper/

若者の生活実態・就労・教育・非行・引きこもり等について毎年調査・報告。大学生の研究テーマと関わりやすいデータが豊富。


次回事前読書案(任意)

第11回「アンケート調査の方法と調査例」に向けて

大谷信介ほか(2013)前掲書、第4章「調査票の設計」。

第11回で扱う質問票設計の基礎として、選択肢の作り方・順序効果・ワーディングの問題を事前に概観しておくと授業の理解が深まる。

鈴木督久(2017)『世論調査の真実』日経プレミアシリーズ。

選挙報道でおなじみの世論調査の裏側を、実務者の視点から解説した読み物。量的調査のデザインが実際にどのように行われているかを知る導入として最適。


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