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第5回 公的統計の利用

10/27(火)Ⅴ講 16:40〜18:20・A301教室

今日のリンク


この回の問い

国が集めたデータを、私たちはどこまで自由に使えるのか。

到達目標

  1. 公的統計の定義と種類(基幹統計・一般統計・業務統計)を説明できる
  2. 国勢調査の目的・方法・活用方法を理解する
  3. 政府・報道機関の世論調査の違いと限界を把握する
  4. e-Stat を実際に操作して、関心のある統計データを検索・ダウンロードできる

要点

公的統計とは

公的統計は統計法にもとづいて作成される統計であり、3つに分類される。

種類 位置づけ
基幹統計 特に重要なものとして総務大臣が指定 国勢調査、労働力調査、家計調査 など
一般統計 行政機関が作成するその他の統計 各種実態調査
業務統計 業務上の記録を集計したもの 人口動態統計(出生届・死亡届から)

基幹統計は報告義務があり、精度が高い一方で、業務統計は「届け出があったもの」しか映らないという性格を持つ。どう作られた数字なのかで、読み方が変わる。

国勢調査(Census)

  • 実施主体:総務省統計局
  • 周期:5年に1回(直近2025年)
  • 対象:日本に住むすべての人・世帯 = 全数調査
  • 調査事項:氏名・年齢・住所・職業・世帯構成など
  • 用途:人口推計、選挙区割り、地方交付税の算定、防災計画などの基礎データ

日本の国勢調査は1920年(大正9年)に始まり、100年以上続いている。行政のあらゆる計算の土台になっているため、ここが狂うと下流の全部が狂う。

世論調査 ―― 誰が実施したかで別物になる

内閣府(政府) NHK・新聞社
目的 政策への支持・国民意識の把握 報道・世論の可視化
方法 無作為抽出+調査員による面接が中心 電話(RDD)・郵送・Webなど多様
公開水準 調査票・標本設計まで公開 概要中心のことが多い
頻度 テーマごとに随時 毎月など高頻度

限界と批判:質問文の言い回しで結果が動く(→ 第11回)、電話調査では固定電話の有無で偏る、回答率の低下が続いている、内閣支持率のように同じ月でも社数によって数字が違う。数字だけでなく、誰がどう聞いたかまで見る必要がある。

e-Stat(政府統計の総合窓口)

https://www.e-stat.go.jp/ で、各省庁の統計を横断的に検索・ダウンロードできる。無料・登録不要。

  • データ検索 … 分野別/機関別/調査名から絞り込む
  • 統計ダッシュボード … 主要指標をグラフで確認する
  • ダウンロード形式は CSV・Excel。そのまま分析に使える

公的統計を使うときの落とし穴

  1. 定義の変更 … 「失業者」「世帯」などの定義は改定されることがある。年をまたぐ比較の前に定義を確認する
  2. 比較可能性 … 調査方法が変わった年をまたぐと、変化が実態なのか方法の変化なのか分からなくなる
  3. 集計単位 … 市町村合併により、地域の時系列が連続しないことがある

教室での演習

e-Stat にアクセスし、関心のあるテーマの統計を1つ探して、実際にデータを表示するところまでやってみる。


今日の課題(Moodle提出)

提出期限:次回授業の開始前まで

分量:300〜500字程度

e-Stat(https://www.e-stat.go.jp/)にアクセスし、自分が関心を持つ社会的テーマに関連する統計データを1つ見つけ、以下の点を述べること。

  1. 統計名・実施機関・最新の調査年
  2. その統計が何を明らかにしようとしているか(目的・調査対象の説明)
  3. データを実際に見て、気づいたこと・読み取れた傾向を1〜2点
  4. この統計データを用いてどのような研究・分析が可能か、自分自身のアイデア

スクリーンショットや図表の添付は任意。初めて e-Stat を使った場合は、操作してみた感想も一言添えること。


この回のまとめ

  • 公的統計は統計法に基づき、基幹統計・一般統計・業務統計に分類される
  • 国勢調査は5年周期の全数調査で、政策・研究の基盤データ
  • 世論調査には政府実施と報道機関実施があり、目的・方法・公開水準が異なる
  • e-Stat を活用すると多様な公的統計に無料でアクセスできる
  • 統計を使う際は定義の変更・比較可能性・集計単位に注意する

次回予告

第6回「市場調査・マーケティングリサーチ」。企業はどうやって消費者を調べているのか。


参考文献

公的統計の利用(政府統計・国勢調査・世論調査)


入門書・教科書

  1. 大谷信介・木下栄二・後藤範章・小松洋(編)(2013)『新・社会調査へのアプローチ:論理と方法』ミネルヴァ書房 → 公的統計の位置づけと二次分析の方法について章を設けている。調査設計との関連で読むと理解が深まる。

  2. 轟亮・杉野勇・平沢和司(編著)(2021)『入門・社会調査法〔第4版〕:2ステップで基礎から学ぶ』法律文化社 → 既存統計の活用・二次分析に関するパートが充実。e-Statの操作手順も含む実践的テキスト。

  3. 谷岡一郎(2000)『「社会調査」のウソ:リサーチ・リテラシーのすすめ』文春新書 → 世論調査・各種統計の読み方の落とし穴を平易に解説した一般向け名著。批判的統計リテラシーを養う入門書として最適。

  4. 森岡清志(編)(2007)『ガイドブック社会調査〔第2版〕』日本評論社 → 公的統計・二次分析・インタビューを均等に扱う。各章末に実践課題があり授業補助として使いやすい。

  5. 長谷川公一・浜日出夫・藤村正之・町村敬志(2019)『社会学〔新版〕』有斐閣 → 社会調査の章で公的統計の意義と活用方法を位置づけている。社会学的視点からの統計利用論として参照価値が高い。


当該回テーマ関連文献

  1. 総務省統計局(編)(2021)『国勢調査の歩み:100年の軌跡』日本統計協会 → 国勢調査100周年に刊行された公式記念誌。調査の歴史・方法の変遷・社会的意義を網羅。学術的にも読みごたえがある。

  2. 岩井紀子・保田時男(2007)『調査データ分析の基礎:SSMデータで学ぶ社会調査と計量分析』有斐閣 → 公的調査データ(SSM調査)を用いた二次分析の実践テキスト。データの読み方・統計処理の導入として最適。

  3. 前田幸男・堤英敬(編著)(2015)『世論調査の新地平:変わるメディア,変わる調査』勁草書房 → 電話世論調査の現状・問題点・新手法(インターネット調査等)を論じた研究書。世論調査リテラシーの向上に有効。


ウェブリソース

  1. e-Stat 政府統計の総合窓口(本回のメインツール) URL: https://www.e-stat.go.jp/ → 府省横断で公的統計データを検索・ダウンロードできる。演習の中核として必ず使用すること。

  2. 統計ダッシュボード(e-Stat付属のビジュアル分析ツール) URL: https://dashboard.e-stat.go.jp/ → 主要指標を地図・グラフ形式でインタラクティブに確認できる。地域間比較や時系列変化の把握に便利。

  3. 総務省統計局「国勢調査」公式ページ URL: https://www.stat.go.jp/data/kokusei/ → 調査の概要・調査票の様式・結果の公表スケジュールが確認できる。過去調査との比較資料もある。

  4. 内閣府「世論調査」ページ URL: https://survey.gov-online.go.jp/ → 過去の世論調査結果・調査票が公開されている。授業でのトレンド調査の事例として活用すること。

  5. J-STAGE(科学技術情報発信・流通総合システム) URL: https://www.jstage.jst.go.jp/ → 「統計」「国勢調査」「世論調査」で検索すると関連する学術論文を無料で閲覧できる。レポート執筆に活用すること。

  6. SSDS(社会科学系データアーカイブ)/ SSJデータアーカイブ(東大社研) URL: https://ssjda.iss.u-tokyo.ac.jp/ → 学術調査データの寄託・利用申請システム。国勢調査の匿名データや各種パネル調査のデータを申請して利用できる。


第10回(全数調査と標本調査)に向けた事前読書案

  • 轟・杉野・平沢(2021)上記2の「標本抽出」「無作為抽出」に関する章を読み直しておくこと。
  • 第05回の演習で使ったe-Statのデータについて「どのように標本が選ばれているか」を調べてみること(調査の概要ページに記載あり)。
  • 総務省統計局「なるほど統計学園」(https://www.stat.go.jp/naruhodo/)で標本調査の基礎を視覚的に確認しておくと第10回の理解がスムーズになる。

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