第1回 資料:データの見方¶
情報活用(2026年度後期)
1. この半年でやること¶
半年かけて、これを一周します。
なぜそんなことをするのか。 その理由を、今日いちばん最初に話します。
2. なぜ「データ」なのか¶
世界は、はっきり決まっていません¶
「1年生は勉強時間が短い」——本当でしょうか。 誰かがそう言っていたのと、調べてみたらそうだったのは、まったく違います。
だから「まとめて」考える¶
1人に聞いても分かりません。10人でも足りないかもしれません。 たくさん集めて、まとめて見る。これがデータの考え方です。
3. データは、そのままでは意味がない¶
たとえば、こんな数字の列を見せられたとします。
何か分かりますか。 分かりませんよね。
このまとめる作業を 記述統計 といいます。むずかしい言葉ですが、やることは単純です。
4. いちばん有名なまとめ方:平均¶
「テストの平均点は62点でした」 「1年生の平均通学時間は38分でした」
便利です。1つの数字で全体をつかめます。
5. ⚠ ところが、平均だけでは分かりません¶
考えてみてください¶
3人のテストの点数です。
平均は、どちらも50点です。
でも、この2つのクラスはまったく違います。
- Aクラス:全員が同じくらい
- Bクラス:できる人とできない人に分かれている
「平均50点」と報告したら、この違いは完全に消えます。
もしあなたが先生なら、AとBで同じ授業をしますか? しませんよね。 でも平均だけを見ていたら、同じに見えるのです。
もう1つ、実際にありそうな例¶
アルバイトを探しています。2つの店の時給を調べました。
| 時給(円) | 平均 | |
|---|---|---|
| 店A | 1000, 1000, 1000, 1000, 1000 | 1000円 |
| 店B | 800, 800, 900, 1000, 1500 | 1000円 |
平均はどちらも1000円。 さて、どちらで働きますか。
これには正解がありません。 「確実に1000円がいい」人はA、「1500円の可能性に賭ける」人はB。 どちらを選ぶにしても、平均だけ見ていたら選べません。
6. 覚えてほしい3つの言葉¶
この3つを見て、はじめて「データが分かった」と言えます。
| Aクラス | Bクラス | |
|---|---|---|
| 平均 | 50 | 50 |
| ばらつき | 小さい | 大きい |
| 分布 | 真ん中に集まっている | 両端に分かれている |
平均が同じでも、あとの2つが違う。 これが今日いちばん大事なことです。
7. 🖐 確認クイズ¶
(挙手またはFormsで。成績には入りません)
Q1¶
ある大学の「学生の1か月のアルバイト収入」の平均が8万円でした。 このことから確実に言えるのはどれでしょう。
- 半数以上の学生が8万円以上稼いでいる
- ほとんどの学生が8万円くらい稼いでいる
- 全員の収入を合計して人数で割ると8万円になる ← これだけ
- いちばん多いのは8万円くらいの学生である
平均から確実に言えるのは、3だけです。 1人だけ100万円稼いでいる人がいれば、他の全員が少なくても平均は上がります。
Q2¶
次の2つのグループは、平均が同じです。違いを説明するのに必要な言葉はどれ?
- 平均
- ばらつき
- 合計
- 人数
Q3¶
「このクラスの満足度は平均4.2点(5点満点)でした」と報告されました。 知りたくなることを1つ挙げてください。(自由記述)
例:「全員が4点くらいなのか、5点と2点に割れているのか」 「何人が答えたのか」「1点をつけた人は何を不満に思ったのか」
こういう疑問が出せるようになることが、この授業の目標です。
8. だから「何を聞くか」が決定的です¶
ここまでの話を、この授業につなげます。
みなさんはこれから、自分でアンケートを作ります。そのとき——
何を聞くかで、あとからできることが決まってしまいます。 聞き方を間違えると、データを集め直すしかありません。半年の授業では、やり直しがききません。
良い問い・悪い問いの見分け方(予告)¶
| 例 | どうか | |
|---|---|---|
| ❌ | 「大学生はスマホをよく使うか」 | 調べなくても分かる |
| ❌ | 「幸せとは何か」 | データでは答えられない |
| ⭕ | 「バイト時間が長い人ほど、睡眠時間は短いか」 | 比べられる。数字で出る |
| ⭕ | 「1年生と3年生で、通学時間の使い方は違うか」 | 比べられる。差が見える |
良い問いには「比べるもの」があります。
これから、グループで自分たちの問いを決めていきます。
9. 今日のまとめ¶
データは、そのままでは意味がない
↓
まとめると、意味が出る(平均)
↓
でも、まとめ方を1つに決めると、見えなくなるものがある
↓
だから「何を聞くか」「どうまとめるか」を、自分で決める必要がある
↓
それが、この半年でやること
10. この先どこで使うか¶
| 回 | 内容 |
|---|---|
| 第3回 | データの種類 —— 何を聞くと何が出せるか |
| 第4回 | 平均・ばらつき・分布を、自分の調査票で使えるようにする |
| 第6回 | 集めたデータで、実際に平均とばらつきを出す |
| 第9回 | 分布を「見る」——ヒストグラム |
今日の話はこの授業の背骨です。何度も戻ってきます。