第2回 資料:どこまで言えるか¶
問い:友達20人に聞いた結果を「大学生は〜」と言っていいか。
1. 全部は聞けない¶
知りたいのは「大学生」のことでも、実際に聞けるのは一部の人だけである。
| 用語 | 意味 | 例 |
|---|---|---|
| 母集団 | 本当に知りたい人たちの全体 | 北星の学生全員 |
| 標本(サンプル) | 実際に答えてもらった人たち | この授業のクラス40人 |
調査の結論は、標本についてしか言えない。母集団のことを言いたいなら、標本が母集団を代表しているかが問われる。
だから最初に決めることは1つ¶
誰のことを知りたいのか。
ここが決まっていないと、「何人集めればいいか」も「誰に聞けばいいか」も決まらない。
2. 選び方には名前がついている¶
| 選び方 | どうやるか | 代表しているか |
|---|---|---|
| 全数調査 | 全員に聞く | 完全に代表する(国勢調査など) |
| 単純無作為抽出 | 名簿からくじ引きで選ぶ | よく代表する |
| 層別抽出 | 学部ごとに分けて、それぞれから無作為に選ぶ | よく代表する。偏りを防げる |
| 多段抽出 | まず学部を選び、その中からクラスを選び、さらに学生を選ぶ | 手間が少なく、そこそこ代表する |
| (便宜的な集め方) | 近くにいる人・友人・SNSで回す | 代表しているとは言えない |
この授業でやるのは、いちばん下である。それでよい。ただし、そう書く。
「本調査は、担当教員の授業の履修者40名を対象としたものであり、大学生全体の傾向を示すものではない」
この一文が書ける人の調査は、信用される。
3. 2つの偏り¶
選択バイアス ── 誰に聞いたか¶
「学食の満足度」を学食の前で聞けば、学食を使う人ばかりが答える。使わない人(=いちばん不満かもしれない人)は最初からいない。
サークルの紹介ページによくある例
「入会者の90%が満足と回答」
今も在籍している人に聞いた数字であることが多い。やめた人は数に入っていない。
非回答バイアス ── 誰が答えなかったか¶
答えなかった人は、答えた人と違う。これが厄介なところである。
担当教員の経験から
前期の授業で、うまく進んでいない学生を早めに見つけようとして、自己申告のアンケートを配ったことがある。
結果はうまくいかなかった。いちばん支援が必要な学生ほど、アンケートに答えない。 授業に来られていない人は、アンケートにも来ない。
「困っている人は手を挙げてください」という方法は、手を挙げられる人しか拾えない。
回収率を必ず記録する。50人に配って20人が答えたなら、答えなかった30人がどんな人かを考える。
4. 聞いてはいけないこと・守ること¶
調査は、答えてくれる人の時間と情報をもらう行為である。
聞かない¶
- 病歴・信条・経済状況など、答えることで不利益が生じうること
- 個人が特定できる情報(氏名・学籍番号)を、必要がないのに聞く
伝える¶
- 何のための調査か
- 答えるかどうかは自由であること
- どう使い、いつ消すか
守る¶
- 目的外に使わない(授業のために集めたデータを、別のことに使わない)
- ねつ造・改ざん・盗用をしない。都合の悪い回答を捨てない
- 保管と廃棄を決めておく
5. 🔴 データをどこに置くか¶
これが、この授業でいちばん事故が起きやすいところである。
集めた回答は、答えてくれた人の情報である。自分のものではない。
| 置いてよい | 自分のGoogleドライブ(自分だけが見られる状態)/Moodleの提出 |
| 置いてはいけない | 公開されるウェブページ/誰でも見られる共有リンク/SNS |
第11回で成果物のページを公開する。そのとき公開してよいのは、集計したあとの表とグラフだけである。
- 回答データ(CSV)は公開しない
- 自由記述はそのまま載せない(書いた本人には、誰の発言か分かってしまう)
匿名にすれば載せてよい、ということではない。
6. 卒業:1文で書く¶
自分の調査について、次の1文を書けるようにする。
「この調査で言えるのは( )までであり、( )については言えない。」
書けないなら、まだ誰に何を聞くのかが決まっていない。
課題2(5点)調査計画書¶
- [ ] 何を知りたいのか(問い)
- [ ] 誰に聞くのか(母集団と、実際に聞ける範囲)
- [ ] どうやって聞くのか、何件集めるつもりか
- [ ] 倫理チェック(聞かないこと・伝えること・データの置き場所)
- [ ] 「どこまで言えるか」の1文