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【第12回 余談】まとめると、逆になる ── シンプソンのパラドックス

※第12回「層別散布図」の余談です。今日やった 「分けて見る」 は、実はとても有名な落とし穴とつながっています。 全体をひとまとめにすると、本当の傾向が消えたり、逆さまになったりする。 これを知っておくと、数字に一生騙されにくくなります。


1. 今日のデータで、もう起きていた

今日の配布データで、身長と睡眠時間の関係を見てみます。

  • 全員まとめて見ると:ほとんど関係なし(相関 r = 0.08)
  • でも 朝食で分けると:
    • 朝食あり → 身長が高い人ほど睡眠が長い、弱い右上がり(r = 0.22)
    • 朝食なし → むしろ 右下がり(r = −0.13)

向きがなのに、まぜて平均すると打ち消し合って「関係なし」に見える。 さらに「経済D かつ 朝食あり」だけに絞ると r = 0.53 まで上がります。まとめた瞬間に、この関係は消えていたわけです。

→ これが今日の「分けて見ると見える」の正体。名前がついています。シンプソンのパラドックスです。


2. 世界一有名な実例:大学院の「男女差別」事件

1973年、アメリカのカリフォルニア大学バークレー校。大学院の合格率を見ると——

  • 男性の合格率:約44%
  • 女性の合格率:約35%

「女性が差別されている」と大問題になりました。ところが、学部ごとに分けて調べ直すと……

  • ほとんどの学部で、むしろ女性の合格率のほうが高かった

なぜ全体では逆に見えたのか? 女性は「そもそも合格率が低い難関学部」に多く出願していたから。全体の平均が、その偏りに引きずられていたのです。

全体の数字は「差別」、分けると「逆」。 どちらが本当かは、分けて初めてわかる。


3. もうひとつ:どっちの治療が効く?

腎臓結石の治療A・治療Bを比べた有名なデータでは——

  • 全体で見ると:治療Bのほうが成功率が高い
  • でも 結石の大きさ(小さい/大きい)で分けると:
    • 小さい結石でも → 治療Aが上
    • 大きい結石でも → 治療Aが上

どちらのグループでもAが勝っているのに、まぜるとBが勝つ。 重症の患者が難しい治療Aに偏っていたのが原因でした。


4. なぜ起こる?(ひとことで)

グループごとに「人数の偏り」や「別の要因」があると、
全体の平均は、その偏りに引っぱられて本当の傾向を隠す(時に逆転させる)

平均や全体は、たった1個にまとめた数字。まとめる過程で、グループの情報が消えてしまうのです。


5. 数字を見たときの合言葉

グラフや平均、ランキングを見たら、5秒でこう問いかけてください:

  1. これ、何かで分けたら違う話にならない?(性別・年齢・地域・時期・グループ)
  2. どこかのグループが極端に多く/少なく混じっていない?
  3. 「全体で〇〇」は、一人ひとりにも当てはまるの?

→ 第10回は「グラフは嘘をつく(見せ方)」。今日は 「平均・全体も嘘をつく(まとめ方)」。セットで覚えると強い。


6. AIに集計させるときも同じ

AIに「平均を出して」「相関を調べて」と頼むと、一瞬で全体の数字が返ってきます。 でも、その全体値が層別で逆転していないかは、AIは教えてくれないことが多い。

だから、こう足してみてください:

このデータ、グループ(例:朝食あり/なし)で分けても
同じ傾向になりますか?層別で違いが出ないか確認してください。

今日のまとめ 全体をまとめると、真実が消える・逆になることがある。 「分けて見る」は、数字に騙されないための一生モノの習慣。


(本資料は、担当教員(小野原)が生成AI「Claude」(Anthropic社)と協働して作成しました。数値は配布データで検証し、内容は教員が確認しています。)