第13回授業資料(最終レポート)¶
1. 今日の目的¶
- これまでの分析を、人に伝わる文章(レポート)にまとめる
- 「関係が見つからないとき」でも、きちんと考察を書けるようになる ← 今日の要所
- この授業の集大成をひとつの成果物にする
2. 今日の位置づけ¶
第13回は成果物(20点)。新しい分析はしません。 これまで作ったグラフや散布図を「文章で説明する」回です。
3. レポートとは何か¶
感想文との違いは1つだけ。「数値・グラフという根拠があるか」。 「楽しかった」ではなく「朝食ありの平均睡眠は6.2時間で、なしより0.8時間長かった」。これがレポート。
4. レポートの4つの部分¶
| 部分 | 何を書く | ひとことで |
|---|---|---|
| ① 目的 | 何を知りたかったか | 問い |
| ② 方法 | どうやって調べたか | 手順 |
| ③ 結果 | データで何が出たか(数値・グラフ) | 事実 |
| ④ 考察 | なぜそうなったか・何が言えるか | 意味 |
この4つの順番で書けば、レポートは必ず成立します。
5. 「結果」と「考察」は別物¶
まずこの区別から。ここが一番つまずくポイントです。
- ✅ 結果:「朝食ありの睡眠は平均6.2時間、なしは5.4時間だった」
- ✅ 考察:「朝食をとる人は生活リズムが整っており、睡眠時間も長いのではないか」
→ 結果に「思う・考える」を書くと混ざります。結果は事実だけ、考察で初めて解釈する。
6. 【今日の要所】関係が見つからないときの、考察の書き方¶
第12回で散布図をつくってみて、多くの人が気づいたはずです——「きれいな関係が出ない」。 それでいい。「関係がない」は失敗ではなく、立派な結果です。大事なのは、それをどう書くか。
ステップ0:関係の強さを見分ける目安¶
散布図の点の並び(相関係数 r を出した人はその数字)で、こう判断します。
| 点の並び / r の目安 | 読み方 | 書き出しの言葉 |
|---|---|---|
| ばらばら( | r | 0.0〜0.2) |
| ゆるく右上がり/右下がり(0.2〜0.4) | 弱い関係 | 「弱い傾向はあるが、断言はできない」 |
| はっきり右上がり/右下がり(0.4以上) | 関係あり | 「関係が見られた」 |
「関係が見られない」ときの考察は、3ステップ¶
- 事実を認める:「〇〇と〇〇には、はっきりした関係は見られなかった」
- なぜかを、3つの可能性から考える(1つ選んで書けばよい)
- ① そもそも無関係 … この2つは、もともと互いに影響しない性質なのかもしれない
- ② 何かが隠している … 全体では見えなくても、グループに分けると違うかもしれない(=第12回の層別!)
- ③ データの限界 … 人数が少ない・自己申告のばらつき・測り方の誤差
- 次の一手:「もっとデータを集めれば」「別の切り口で分ければ」見えるかもしれない
穴埋めテンプレ(関係なしバージョン)¶
〇〇と〇〇には、はっきりした関係は見られなかった(点がばらついていた)。
これは、〇〇(①もともと無関係/②別の要因が隠している/③データが少ない)
ためと考えられる。ただし今回は人数が少ないため、
より多くのデータで確かめる必要がある。
NG と OK(関係なしのとき)¶
- ❌ NG:「関係がなかった。失敗した」「よくわからなかった」
- ✅ OK:「関係は見られなかった。これも一つの結果であり、〇〇と〇〇は互いに独立している可能性を示している」
研究では、「関係がなかった」という発見も同じくらい価値があります。 無理にこじつけて「関係がある」と書くほうが、むしろ減点。正直に、ひかえめに。
さらに一歩:もし「はっきりした関係」を見たいなら、何を測る?¶
「関係がなかった」で終わらず、「では、どんな2つを測れば関係が出そうか?」を考えると、考察がぐっと深くなります。これは第8回「アンケート設計」に戻る、研究の入口の考え方です。
コツは1つ。「一方が増えると、もう一方も自然に増える(または減る)」と理屈で説明できるペアを探すこと。
| はっきり関係が出そうなペア | 予想される向き | 理由 |
|---|---|---|
| 身長 × 体重 | 正(右上がり) | 体が大きいほど重い |
| 勉強時間 × テストの点数 | 正 | やった分だけ伸びる |
| 夜のスマホ時間 × 睡眠時間 | 負(右下がり) | 使うほど寝る時間が減る |
| 睡眠時間 × 日中の眠気 | 負 | 寝るほど眠くない |
一方、今回の「身長 × 睡眠」「身長 × 脈拍」は、体の別々の性質どうしで、理屈でつながらないので関係が出にくかった、と説明できます。
考察の締めに一言:「次に調べるなら、〇〇と〇〇を測るとよい。〜だから関係が出ると予想される」 と書けたら、それはもう研究者の発想です。
7. 今日使う分析(第10〜12回から自由に選ぶ)¶
新しく分析する必要はありません。自分がいちばん語れるものを1つ選んでください。
- 第10回のグラフ(棒グラフ・ヒストグラム)
- 第12回の層別散布図(2枚を比較したもの)
どちらでもOK。グラフを1つ以上レポートに貼り、それを言葉で説明します。 関係が出なかった分析を選んでも、まったく問題ありません(上の§6の書き方で立派なレポートになります)。
8. NGレポート¶
- 感想文(「勉強になった」だけ/データがない)
- 結果に数値がない(「なんとなく多かった」)
- 結果と考察が混ざっている(事実と意見が区別されていない)
- グラフがない、または貼っただけで説明がない
- 関係がないのに、無理やり「関係がある」と書く(こじつけ)
- 言い切りすぎ(n=17なのに「〇〇だと断言できる」)
9. OKレポート¶
人数が少ないデータでは「〜という傾向が見られた」「断言はできないが」とひかえめに書くのが、むしろ誠実で高評価。
10. AIの使い方:今日は「壁打ち・推敲の相手」¶
今日のAIは、書いてもらう道具ではありません。 構成と主張は自分で決めて、下書きをAIに見せて直させます。
使えるプロンプト¶
下書きを推敲してもらう
関係が出ずに考察が書けないとき(答えでなく問いをもらう)
⚠️ やってはいけない¶
- AIの文章を丸写しする(自分の主張が消える)
- 数値をAIに作らせる(数値は必ず自分のデータから)
- 関係がないのに、AIに「関係があること」にしてもらう(こじつけ)
AIに「書いてもらった」レポートは、読めばわかります。今日は自分の頭で構成し、AIに鍛えてもらう回です。
11. 配布テンプレート(そのまま使ってOK)¶
タイトル:〇〇についての分析
1. 目的
本レポートでは、〇〇について明らかにすることを目的とする。
2. 方法
第8回で収集したアンケートデータ(n=61)を用い、
Excelで〇〇を集計し、グラフ(散布図)を作成した。
3. 結果
〔ここにグラフを貼る〕
〇〇の平均は〇〇であり、〇〇と比べて〇〇であった。
(関係を見た場合)〇〇と〇〇には、〜な関係が見られた/見られなかった。
4. 考察
(関係あり)この結果から、〇〇と考えられる。理由としては〇〇。
(関係なし)〇〇と〇〇には関係が見られなかった。これは〇〇のためと考えられる。
ただしサンプル数が少ないため、断言はできない。
12. 今日の作業¶
- 第10〜12回から使う分析を1つ選ぶ(関係が出なかったものでも可)
- グラフをレポートに貼る
- テンプレに沿って目的→方法→結果→考察を書く
- 関係が出なかった人は §6 の3ステップで考察を書く
- 自分の下書きをAIに推敲させ、指摘を見て直す
13. 課題(20点)¶
課題名¶
最終レポート
提出物¶
- A4 2〜3枚程度のWord文書
- グラフ1つ以上(第10〜12回で作ったもの)
- 目的・方法・結果・考察の4構造を含む
ファイル名¶
14. 評価(20点)¶
| 基準 | 点 |
|---|---|
| 4構造がそろっている(目的・方法・結果・考察 各2点) | 8点 |
| 結果に数値・グラフが使われている(データに基づく) | 6点 |
| 考察が結果と区別され、根拠を伴う(感想でない) | 6点 |
「関係が見られなかった」レポートも、§6の3ステップで書けていれば満点。 関係の有無は評価に関係しません。
15. 提出方法・期限¶
- Moodle提出(Word)
- 提出期限:最終回の授業開始まで
- 英文:7/16(木)10:40まで
- 経済D:最終回(補講日)開始まで ※日程は別途連絡
16. 遅延ルール¶
- 期限内:100%
- 遅延:50%
- 未提出:0点
17. 今日のまとめ¶
グラフや数値は、それだけでは伝わりません。言葉にして、根拠とともに主張するところまでが分析。 そして「関係がなかった」も、正直に書けば立派な結果。ここで授業全体が1つにつながります。
TA用補足¶
今日のTAの役割¶
内容の添削・結論の提示はしない。学生がどこで止まっているかを切り分けて、AIの使い方に橋渡しする。 とくに今日は 「関係が出なくて手が止まっている学生」 が多いはず。
学生:「関係がなかったので、書くことがありません」
TA :「“関係がなかった”が結果です。なぜ無かったと思う?
①もともと無関係/②分ければ見える/③人数が少ない、どれっぽい?」
学生:「人数が少ない、かな……」
TA :「じゃあそれを考察に書けば完成です」
優先対応¶
- 「関係がなくて書けない」 → §6の3ステップを見せる(=今日の一番の役割)
- 目的が書けない → 「何のグラフを選んだ? それで何を知りたかった?」
- 結果に数値がない → 「グラフの数字を1つ、文に入れよう」
- 考察が感想になる → 「それは結果? 考察? 事実か意見か分けよう」
やらないこと¶
- 内容の添削・文章の代筆
- 結論を与える
- AIの出力を丸写しさせる
- 「関係がないのは失敗」という空気を作る(むしろ正直な結果として励ます)
授業進行(想定)¶
- 10分:説明(レポートとは・4構造・結果と考察の違い)
- 10分:§6 関係が見つからないときの考察の書き方(今日の要所)
- 5分:AIの使い方デモ(下書きを推敲させる)
- 55分:作業(分析を選ぶ→貼る→書く→AIに推敲させる)
- 15分:数名の構成を共有・確認
- 5分:提出方法・期限
デモ実況スクリプト¶
パート1:関係なしの考察デモ(5分)¶
「第12回、きれいな関係が出た人?……少ないですよね。今日はまず、“関係がなかった”ときの書き方をやります。」
[黒板/画面に3ステップ]
「① まず事実:『身長と睡眠に関係は見られなかった』。② なぜ? 3択から選ぶ——もともと無関係/分ければ見える/人数が少ない。③ 次はどうする。これだけで考察は完成します。」
「“関係がなかった”は失敗じゃない。正直に書けば満点です。」
パート2:AI推敲デモ(5分)¶
「今日はAIに“書いてもらいません”。“直してもらいます”。」
[わざと弱い下書きを見せる]
[AIに入力]
「AIは『“思った”は考察、まず結果として数値を書きましょう』と返してきました。これを見て、自分で直す。これが今日のやり方です。」
設計意図(核心)¶
- 第10回(可視化)=作る
- 第12回(層別散布図)=比べて読む(=多くの場合「関係が薄い」ことを体験する)
- 第13回(レポート)=根拠とともに主張する=伝える。関係がなくても書ける型を持つ
「きれいな関係」を探すのではなく、出た結果を正直に言語化する。無相関を失敗と感じさせないことが、この回の一番の狙い。情報を「受け取る」側から「根拠を持って発信する」側へ。ここまでが情報リテラシーの一周。